短編小説
□鬱陶しい雨
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入学式が始まった時点で、やばかった。
本来来なくていい上級生が乱入し、新入生を早速苛める虐める。それを防ごうと親が闘う。殆どの生徒は親がいないが、いるところの親は凄い。何と言うか、さすが親になるほど生きてきた人間だ、というべきか、知恵もあるわ経験もあるわで上級生はボロボロになっていく。
俊喜達は極力目をつけられないように体育館の端っこの方で固まって惨劇を見ていた。
最早入学式などではない。体育館は闘技場。親も生徒も凄まじい形相で繋樹を駆使。
教師達は手に負えず、ただ繋樹によって体育館が破壊されないようにフィルターを張ることしかできない。
止めようともせず、ただ呆れて眺めているだけだった。
「これで一番マシ、か…」
悟が溜息をつきながら言った。
双子は環境の変化に全く動じない。すぐ横で誰かが戦っていようが、人が殺されかけようが、自分が狙われようが…。冷静ともいえるのだろうか、ただ全てを客観視している。それは彼女達が得意とする繋樹での状況把握、主に誰がどこにいてもわかったり、物体を透視したりできるのだが、それがあるからなのだろうか。しかし何にせよ長年一緒に過ごしてきた俊喜や悟でさえも双子のことはよくわかっていない。
俊喜はぼんやりと周りを眺めた。
たまに吹っ飛ばされた上級生などがこちらに飛んでくるが、悟が弾くため、俊喜達の半径一メートル辺りのところに三人ぐらい倒れている。
全くもって、最悪の状況だ。
何が入学式だ。
これのどこが入学式なんだ。
放って置いたら、死人が出るかも知れないのに。
俊喜は、苛々してきた。
何もしない教師に、売られた喧嘩をすぐに買う単細胞のような新入生の親達に、呆れるほど喧嘩が好きな上級生達に。