短編小説

□ねがいごと    かなう
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彼は、ゆっくりと頷いた。真っ直ぐと私を見据えたまま。

「ウソ・・・」

私は、唖然とした。信じられなかった。

「嘘じゃない。中学になったら、いつか告ろうと思ってたけど、学校変わっちゃったから。会える機会を探してた」

彼は優しく微笑みながら言った。
私は、嬉しくてたまらなかった。ずっと片思いだと思っていたのに、ずっと両想いだった。
今までのことが、何もかもどうでもよく思えた。会いたくて一日中彼が通りそうな場所を回ったり、手紙を書こうと思って何度も断念したり。
今は、思い返すよりも目の前に来た幸せを、掴まなくては。
今自分の想いを伝えることで、今までの想いが報われる。
たった一つの、勇気だ。
ガンバレ! 自分!

「わ・・私も好き! ずっと好きだった!」

言えた・・・・
やっと、言えた。何年もいえなかった言葉を、言うことができた。

彼は、満面の笑みを浮かべ、私を抱きしめた。
何年も求めたぬくもりが、すぐ傍にあった。
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