短編小説

□ねがいごと    かなう
2ページ/4ページ

飛ばされたおみくじを捕まえてくれたのは、会いたかった、彼だった。
「ひさしぶり」
彼は陽気に笑いながらそう言うと、私におみくじを返してくれた。
彼は、私よりも背が高くなっていた。小学生の時は私の方が高かったのに、二年のうちに追い抜かれてしまっていた。
私は、緊張して言葉が見つからなかった。
「どうしてここに?」
これぐらいしか、言えない。。
「別に、ただ何となく」
彼は素っ気無く言った。
「学校、どう? みんな元気?」
「元気だよ。学校は楽しい」
「そう・・・」
話が、途切れた。もっと、聞きたいことがあるのに、話したいことがあるのに、それを切り出す勇気がない。
「彼氏とか、できた?」
彼が笑いながら言った。聞きたかったことを、先に聞かれてしまった。
できるわけないじゃん! 心の中で叫んだ。
「い・・いないよ」
ちょっと、不自然だったかな。目を、逸らしてしまった。
「そっちは? 彼女できたの?」
作り笑いをしながら、聞いた。
「いないよ。好きな人はいるけど」
彼は、小さく笑っている。
私の胸が、軋んだ。小さな希望もあったが、そんなもの、暗闇の中の小さな光だから、望みはなかった。期待も、していなかった。
だから、聞いた。もう、望みを捨てたから、勇気もくそもなかった。
「誰?」
私は寂しげに笑いながらも、彼を見た。
彼は、やさしく笑うと、人差し指を私の方へ向けた。それだけで、彼は何も言わなかった。
私は、頭が真っ白になった。
確かに、彼の人差し指が指しているのは私だった。でも、信じ難かった。
私は、取り乱しながらも、彼に聞いた。
「わ・・私?」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ