短編小説

□淡いサクラのように
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 新しいクラス分けに一喜一憂している生徒を横目に、俺は自分の名前を探した。

「よう零! お前C組だぜ。俺と一緒な!」

 いきなり肩を組んできた友人に顔をしかめる。C組のところを見ると、確かに俺の名前。そして、友人の名前もあった。俺は、クラスメイトになる生徒達の名前に目を通す。名前は知っていても、話したことのない奴らばかりだった。

「それと……喜べ、彼女と一緒だぞ!」

 友人は楽しそうに表を指差しながら言った。その先に、琴葉の名前がある。

「ホントだ。まぁでもホームルームに出ない琴葉にクラス分けなんてどうでもみたいだから」

 淡々と言った俺に友人はつまらなさそうに顔をしかめた。

「おいおいちょっとは喜べよ。普通はさ、彼女と同じクラスになれたって喜ぶものだろ」

「さぁ……俺と琴葉に普通を求めない方がいいと思う」

 表から目を反らした俺はそのまま新しいクラスへと向かう。騒いでる生徒がうるさくてたまらない。慌ててついてくる友人の足音が聞こえた。

「今日も水瀬は屋上か?」

「ああ、さっき会ってきた。明日から屋上の工事が始まっていれなくなるから、別れを惜しんでいた」

「工事? 何かあるのか?」

「今日の始業式で説明があるだろ。その時によく聞いとけ」

 俺は軽くあしらうと、新しい教室に足を踏み入れた。半分くらいは知っているだろうか。結局話すこともないだろう。琴葉と同じクラス。確かに嬉しいけど、学生が一番長くいる教室にいないなら、その喜びは半減する。

「ひゃー何か3年になったって感じしねぇな」

 賑やかな教室に馴染むように声を上げた友人を横目に、俺は自分の席を探す。
 琴葉の席と俺の席は離れていた。水瀬と上条なのだから当然だが。

「零、お前進路決まってんの?」

 席についてボーッとしていた俺に友人は声をかけてくる。喧騒から逃れようとしている俺を、放っておかない気だろうか。俺が浮いているとすぐに話し掛けてくる。

「特に決まってない」

「まぁ、そんな感じだよな。俺はさ、何としてでも○○大の工学部に行きたいんだ!」

「……誰も聞いてない」

「お前が聞かないから俺一人で語るはめになってんだよ!」

 俺は未だにコイツが何をしたいのかわからない。チャイムが鳴り、新しい担任が教室に入って来たため、生徒達は自分の席に戻っていく。友人も、ふてくされながらも背を向けた。

「今のお前じゃ、この理系のクラスにいること自体危ういぞ」

 ぼそりと言った俺の言葉に、友人は何故か嬉しそうに笑った。

 進路……なんて深く考えたことがなかった。将来の夢もこれといってないし、就きたい職業も特にない。
 よく考えたら、俺はつまらない奴だと思った。



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