月下紫舞
□8000hit thanks特別短編
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とっぷりと日が沈み、人間達が家の中へと逃げるように帰って行く頃。
学園の敷地内、広い運動場を隔てた先にポツンと佇む校舎に、ぼんやりと明かりが灯る。
吸血鬼クラス。
総勢50名ほどの16歳〜18歳の優秀な吸血鬼達を集めた、教育の場。
たった一人の人間が教師を務め、正院で紫苑珠稀の次に恐れられている黒薙暁の監視の下、吸血鬼達は人間についての知識を深める。
「マジ終わんねえよこれ……」
何台ものパソコンが置かれた自習室の中、金髪の頭を抱えて唸った少年が、同じ机に座る二人に睨まれる。
手元にあるパソコンには人間の心理と行動の関係をパターン化した表。
自習室の一角、一つの丸テーブルを囲んで座る三人はその表を埋めていた。
「わかんねえ……。人間の行動なんて知るかよ……」
「ちょっと、独り言が大きいわ」
ぶつぶつと文句を言いながら、空白になった表を適当に埋めていた金髪の少年、萩彰人(ハギ アキト)は冷たい言葉に一蹴された。
ブロンドの髪を耳にかけながら蒼い眼を細めて彰人の方を見る少女、早瀬奏花は小さく溜息をついた。
舌打ちをして黙り込んだ彰人と、満足したようにパソコンの画面に視線を戻す奏花をぼんやりと見ていた少年、相馬海響(ソウマ アオト)は他の二人とは比べ物にならない速さで表を埋めていく。
敬院及び尊老院で一番名を馳せている相馬家の次男、相馬海響(アオト)。彼の苦悩の一日に眼を向けてみよう。
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