sincere
□お餅と心
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『光ー詩織来れないから新年会中止ね』
「っえええ?!」
光に対して言った明月の言葉に、詩織が驚きの声をあげた。その声の大きさに、周りにいたオバサン達が不審げに見てきたため、詩織は頭を下げた。
『だって皆が揃わなきゃ何やったって意味がないんだよ!』
明月の代わりに光の声がして、詩織は申し訳なさそうに黙り込んだ。
自分1人都合が悪いため、せっかくの企画が台無しになってしまう。自分を除け者にして、他の皆が楽しんでくれても全然構わないのに。
『詩織さんは私達の大切な仲間だから絶対に除け者になんかしませんです』
皐月の力強い言葉に、電話越しでも相手の考えてることがわかるのかと、皐月の能力の未知数に驚いた。
そして、嬉しかった。
詩織は潤んだ目を周りの人に見られないように俯いて、照れるように微笑んだ。
「ありがとう……ございます。新年会、行きたいので4日を空けてもらうよう頼んでみます」
『そんな……悪いよ。新年会は学校始まってからでも出来るし……』
再び明月の声に変わった。
詩織は決心したように顔を上げると、色とりどりの野菜をカゴに入れていく。
「いえ、頼みます! そして新年会やりましょう!」
『……わかった。詩織がそこまで言うなら、やる方向で準備進めるよ』
「ありがとうございます!」
詩織は満面の笑みを浮かべた。
今から、能研の皆とやる新年会が楽しみでしょうがなかった。
しかしその前に、何としてでも彼を説得し、4日の打ち合わせを他の日に回してもらわなければ。
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