短編小説

□ねがいごと    かなう
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久しぶりに、近所の神社に来た。懐かしい思い出が、そこにはたくさん詰まっていた。
小学生の時に、みんなで一緒に遊んだ場所。お正月に、いつもここで顔を合わせては、冬休みの宿題やお年玉の話をした。
小学校を卒業して、二年。私は、中学二年だ。
去年のお正月はこの神社に来ることが怖くて、来れなかった。
いつも一緒に遊んでいた、彼に会うのを恐れて。

私は、みんなに黙って中学を受験したため、卒業式の日に打ち明けたとき、みんな悲しんだ。彼も、悲しんだ。
学校が離れて、みんなと会うこともなくなって、寂しかった。でも、自分が選んだ道だったから、自業自得だったんだ。彼への想いも、消えるどころか、会えないことが逆に想いを強くしてしまった。

会いたかった。

私は懐かしい日々を思い出しながら、境内をゆっくりと歩いた。周りの子供連れやちびっ子どもの喧騒が、まるで聞こえない。隔離されたように、思い出に浸っていた。
ふと目に入ったおみくじの看板。
毎年引いていたおみくじ。私は、おみくじを引くことにした。
「おみくじ一回、お願いします」
私は巫女さんに百円玉を渡した。六角柱の木でできたおみくじを渡された。ずっしりと重かった。
じゃら、じゃら、じゃら・・・
私は横に振りながら傾けて、穴の下に手を翳した。
木の棒が一本、手のひらに落ちてきた。棒には、二九と書かれていた。
私はその棒とおみくじの箱を巫女さんに返した。巫女さんは棒の番号を見ると棒をすぐに箱に戻し、後ろの棚から一枚の薄い紙を私に差し出した。
私をそれをうけとり、開いた。

中吉。少し、溜息をついた。無意識のうちに、待ち人とねがいごとのところに目が移った。
待ち人  来たる
ながいごと  かなう
少しの希望が、感じられた。

突風が、吹きつけた。薄いおみくじの紙が、風に飛ばされてしまった。
「あっ! 待って」
私はおみくじを追いかけた。風の方が速くて、なかなか捕まえることができなかった。
すると、あと少しで木に引っかかってしまうところで、誰かがおみくじを、捕まえてくれた。
「あ・・・・」
私はその人の顔を見て、足を止めた。
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