短編小説

□甘いチョコレートのように
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 毎日をただ同じように過ごすことに飽き始めた俺は、あの日初めて授業をサボった。

 成績、生活態度共に優等生だった俺にもちろんサボりの経験なんてなかった。

 今考えると、逆にその経験がなかったからこそ君に会えたんだろう。


 ついこの間友人から借りた漫画の主人公が、授業をサボるために屋上へ向かった。
 他に考えもしなかった俺は、その主人公と同じように屋上へと向かった。何も考えず、漂う亡霊のようにぼんやりと。
 先生に見つかったらどうしようなんて、そういえば考えてなかった。会わなかったのは運が良かったんだな……。


初めて開ける屋上への扉は、薄いはずなのにとても分厚く重いように感じたんだ。
 俺がその扉の先の知らない世界に恐怖を抱いてたからだろう。情けない話だけど……。

 でも、勇気を出して開けてよかった。



 君に、会えたから。



 冬の冷たい風に立ち向かうようにして、中央に仁王立ちする彼女の背筋はピンと伸ばされて燐とした雰囲気を漂わせていた。

 風に揺れる黒いショートヘアの髪は自由に空を舞い、皮膚を切るような冷たい風に曝されている白い首筋。

 制服のセーターを着くずして、指先まですっぽりと覆っている。 膝上のスカート……他の女子と同じくらいの、短すぎない短さ。

 黒いハイソックスをはいた足はすらりと細く、長そうに見えても、身長はそれほど高くない。

 風に溶け込むようにその身を任せ、翼があれば今にも飛び立ってしまいそうな。




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