徒然青春記

□よん。入学式編
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「だったら代わりにやってもらったらよかったな。留年スレスレの奴が卒業生を送るんだって。笑えちゃうよね」

 冷たい笑みを浮かべながら淡々と言った祐一の腕の先、透の頭は窓の外、校舎3階の高さにあった。
 圭だけが慌てて祐一を止めようとしたが、他の二人はいつもの光景をただ傍観していた。やや笑みを含んで。

「わ……悪かったって! 誰もお前に人並の演技力を求めてなんかいねえよ」
「……俺に人並の演技力はないんだ……。そう、じゃあ今お前を落とそうとしている俺は本心なんだな」

 祐一は珍しくニッコリと笑いながら言った。その冷たい言葉に透の顔は真っ青になった。
 泣きそうになっている圭、流石にやばいと感じた真が祐一を止めようと窓際に寄った時、教室の入り口から双子の名前が呼ばれた。
 葉月が最初に振り返り、透の胸倉を放した祐一が振り返る。
 双子を呼んだのは生徒会の者と、教頭だった。双子はすぐに彼らの元へ行き、そのまま何かを話した後一緒にどこかへ行ってしまった。
 残された三人は去っていく双子を見ながら表情を曇らせた。

「もう、違う世界なんかなー。俺らとは」
「入学式終わって、始業式もやって授業が始まると、きっと大忙しなんでしょうね」
「潮時じゃないか? いつまでも一緒ってわけじゃないだろうし。大学は付属だから同じとこ行けたとしても、学部は違うだろうからな」

 生徒会という、一般の生徒から見ればエリートともいえる集まりの中に入った双子を、残された三人は遠い存在として認識するしかなかった。
 いつかは別れが来る友人としては、ちょっとした余興なのかもしれない。
 永遠なんてものは、存在しない。
 それを、改めて感じさせられた。




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