のべれっと

□無題
1ページ/4ページ


例えば…そう、俺たちは糸。切っても切れない頑丈な…。

あの幸せな日々。心の奥に大切にしまいこんだ思い出を今からこの表紙がくまさんの可愛いノートにメモっておこうと思う。2年の夏休みに侑季と一緒に選んだ、ミルキーピンクにテディベアがちょこんと座って周りにレースのプリントがされた可愛いノート。挫けそうな事が有った時に見て元気が出るように。


「桜高校から来ました苅谷茉麻です。」
「では、お座りください。」
「失礼します。」
「では、苅谷さん自己紹介してください。」
「はい。得意科目は理科の生物で、カエルの解剖が特に好きです。趣味はお菓子作りで、最近はパンにも挑戦しています。」
「すごいですね。では、何か自慢になることは有りますか?」
「はい。保健のテストで必ず1位をとる友達がいることです。」
「素敵ですね。その友達を大切にしてください。」
「はい。勿論ですw」
「いやいやいや、趣旨違うし。てか、その前にンな質問しねぇし。」
「するかもしれないじゃんねぇ?茉麻ちゃん♪」
「ねぇ、明希ちゃん♪」
俺の名前は苅谷茉麻。受験真っ最中というか、試験を明日に控えた高校3年生。1人称は”俺”だが、戸籍上ではれっきとした女だ。
しかもある意味でお嬢。というか…姫?
面接官役をしてくれているのは、矢沢明希。心のそこから信頼できる親友。寧ろ心友。
「ぜってぇしねぇよ…。もういいや。ねぇ、菓子喰わねぇ?」
妙に緊張した空間に嫌気がさし、気晴らしにポッキーを取り出すこの仔は蓮田侑季。俺が一番好きなヒト。
「あ、何コレ?期間限定?!俺、期間限定に弱いンよぉ。」
「あっは、うまそう♪先にもらい。」
「あン?普通持ってきた俺からだろ?」
「まぁまぁ、胃に入っちゃえば一緒でしょ。」
こんなガキみたいな3人を横で笑いながら見守るのは、橋本鈴霞。成り行きで、ママ的な立場に…。
「えぇ、でもさぁ…」
「変にこだわると幼稚園生みたいだよ?」
「はい。」
まぁ、まんざらでもなさそうだけど。

 この四人は、最高であり、最強の仲間だ。こんな素敵な人たちに逢った俺は、とても運が良いのだろう。世の中には、めぐり逢えず一人で「死」を選んでしまう人も居る。少なくとも、半年前までは俺もそちらの人間だった。生きることに楽しさを見出すことができず、人間不信に陥り自殺まで考えた。所謂、鬱ってやつ?

「みんなの笑顔を心配するよりも先に、茉麻の幸せを探すほうが大切だと思うけどな。」

そんなある日、明希は俺の欲しかった言葉を…優しさで包み隠してしまうわけでもなく、真っ直ぐに、だからといって痛くない言葉をくれた。誰かに心配してもらいたかったのだ。何も言わなくても俺のことがわかる人、そんな人を俺は探していた。そして出逢った。甘い考えだなんて分かってる。頼り続けるのがいけない事も。でも、そんな明希を俺は人生で初めて心から信じてみようと思った。いや、信じたいと思った。俺は話したいこと(例えば、いってた病院の精神科の看護婦さんにめっちゃ可愛い人が居たとかそんなどうでもいいこと)だけを話した。明希も、同じようなことが有って人間不信になったとか、ゲームの趣味が同じとか、話したいと思うことだけを話した。そのとき、必要がなければはなさないが、後々相手が悩んでることで参考になるのなるかなと思ったら話す。ほかの二人も同じだった。他人にはあまり深く介入しない。いや、その術を知らなかっただけだろう。
他から見れば、単なる傷の舐めないに見えたかもしれない。
 でも、それでも俺は幸せだったんだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ