ブリーチ小説

□バージンロードを歩きましょう
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教会を飛び出し、ただ、がむしゃらに走る。
止まっては、駄目なのだと、ルキアは己を叱咤する。木の下までくると、もう、堪えることができなかった。

涙が、溢れだす。
手で口をおおっても、込み上げる嗚咽を止めることは、出来ない。

もう、これ以上、演じることは、出来ない。


彼が、好きだ。
始めは、ただの、政略結婚の為のお見合いだった。
どうせ、結婚しなければならないなら、それなりに名のある企業の子息であるほうが、義兄と姉の為にもなる。それに、容姿も悪くない。写真を見せられたとき、ルキアが思ったのは、それだけだった。
でも、違った。


初めて会ったときは、怖いと感じたけれど、本当は誰より家族想いで、困っている人を放っておくことができない、優しい人だった。いつも眉間に皺を寄せていて、恐い顔をしているけれど、笑うと子供のように無邪気で、目が離せなくなる。
いつだって、彼は、ルキアを大切に扱ってくれた。
でも、それは、ルキアが朽木家の人間だからだ。それがなければ、彼と出逢うこともなかった。

彼にとって、ルキアは、大切な取引先の社長の妹。ただの婚約者でしかない。

それを、この一年で思い知らされた。
彼は、一度も、ルキアに触れることは、なかった。
パーティーに出席するとき、家族ぐるみで食事をするとき、エスコートの為に手に触れるか、腕を組むか。ただ、それだけだ。

でも、それでも。

傍にいられるなら、と婚約者を演じてきた。
しかし、それも、今日まで。

もう、誤魔化すことは、できない。だって、こんなにも、彼が、好きだから。



「ルキア!」



名を呼ばれて、身体が震えた。慌てて、涙をぬぐうが、上手くできない。

ふと、感じた、ぬくもり。

一護の大きな腕が、ルキアを包み込んでいた。


「な、に?」


震える声で、問えば、耳奥に低い、彼の声が届く。


「好きだ」


落ちてきたのは、そんな言葉。


「う、そ・・・・」


「うそじゃない。初めて、逢ったときから、ずっと、好きだった」


ぎゅっと、抱き締められて、ルキアはもう、涙を堪えることが出来なかった。


「泣かないでくれ、ルキア。本当は、ずっと、こうして、お前に触れたかった」

とくんと、背中から感じる一護のぬくもりが愛しくて、彼の言葉が嬉しくて、ルキアは、涙を溢し続けた。

ゆっくりと、振りかえれば、優しい瞳とぶつかった。

「本当、に?」


「ああ、好きだ」


流れ落ちる涙もぬぐわず、見上げれば、一護がそっと涙をぬぐってくれた。

そして、ルキアの手をとると、一護はそっとブーケを差し出した。
ルキアは、目を見開いた。大好きな姉が作ってくれた胡蝶蘭のブーケ。

"あなたを愛します"

姉が、そっと、教えてくれた花の意味が、胸に響き渡る。


「俺と、もう一度、結婚してくれませんか?」


真っ直ぐ見つめる彼の瞳の先に、自分が映っている。それが、こんなにも、嬉しい。


「はい!」


ルキアは、一番の笑顔を浮かべ、笑った。
もう、そこに、涙の跡はない。


そして、舞い降りたのは、優しい口付け。



さあ、もう一度、バージンロードを歩きましょう。

そのさきには、きっと、幸せな未来が待ってる。





END


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参考
http://hanakotoba.feromon-store.com/
"愛を告白する花言葉"より
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