ブリーチ小説

□月夜の再会 2
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※オリキャラあり




「ルキア・・」


呆然と立ち尽くす一護に、微笑んでみせる。
いつもと変わらぬように、笑ってみせるが、気を抜けば、身体が震えてしまう。ルキアはぐっと、手を握り締める。


一護には、悟られたくない。こんなにも、弱気な己を。
その一心で、一護に微笑む。


「懐かしいな。まさか、こんな所で逢うとは・・・」


ルキアの言葉は、最後まで、続かなかった。
一護の腕が、ルキアの小さな身体を抱き締めていたからだ。


「一・・・護?」


答えぬかわりに、一護はルキアのぬくもりを、その存在を確かめるように、深く深く、抱き締める。


「どう、したのだ?」


胸が震えるのを、ルキアは感じていた。
そう、これは、喜びだ。
戸惑いながらも、一護の胸にぴたりと頬を寄せる。
ドクン、ドクンと少し早鐘に聞こえる一護の心音が、いとおしい。
包まれる一護のにおいは、ルキアが何よりも、求めていたものだ。それが、すぐ、そばにある。


「逢いたかった」


零れ落ちた言葉が、ルキアの耳に届く。
それが、ルキアの胸を甘く震わす。


「逢いたかった・・・」


苦しいほど、抱き締められる。
一護の腕に添えたルキアの手に、力が籠もる。
もう、離したくない、とルキアの心が叫ぶ。
此れ程までに、愛しい人なのに、どうして、自分とは違う存在なのか。
何度、考えたか、ルキアにはわからない。
涙が込み上げてきて、ルキアは、一護の背中に腕をそっとそえた。


「一護・・・・。私も、逢いたかった・・・」







どれほど、そうしていただろう。
一護は、ゆっくりとルキアから身体を離す。
目の前にいるはずなのに、間にある距離感は、まるで変わらない。


「どうしたんだ?こっちに来るなんて」


そっと、一護の大きな手が、ルキアの頬を包み込む。それだけなのに、ルキアの心音は高まる。


「新入隊員たちの監督の為に、来たのだ」


視線を上げれば、一護の瞳とぶつかる。
ブラウンの瞳は、優しくて、ルキアは目が離せなくなる。見つめられているだけなのに、全身を捕われてしまったかのようにルキアは感じた。
一護の手が離れる。その離れていったぬくもりが、愛しくてならなかった。


「お前も、大変なんだな」


「まあな。一護も元気そうで、安心した」


無言のまま、見つめあう。互いに想いあっていることは、ルキア自身気づいている。きっと、一護も。

けれど、口には出せない。出しては、ならない。

それが、よけいに苦しくて、ルキアの胸を締め付ける。
愛しくて、愛しくて、たまらなくなるのだ。


不意に、霊圧を感じて、振り向けば、ポニーテールをした死女が立っていた。


「朽木先輩、どうしたんですか?」


「ああ、えみか、すまない。すぐに、行く」


えみか、と呼ばれた死神は、一護に気付くと驚きの声を上げる。


「見えるんですか!?」


ルキアはくすりと笑うと、えみかを見つめ、説明しはじめる。


「ああ、一護は私たちの姿が見えるし、彼が現在戸魂界で認められている死神代行だよ」


ルキアの説明に、えみかは目を輝かせる。


「すまない、一護。そろそろ、行かなければ。えみか、悪いが先に行っててくれ」


えみかは素直にルキアの言葉に従い、すっと姿を消した。
それを見送った後、ルキアは一護に向き直る。


「今日は逢えて、嬉しかったよ。それではな」


立ち去ろうとしたルキアの腕を、一護が引き止める。

「一護?」


「これ、やるよ」


差し出されたのは、小さなうさぎのついたストラップ。


「くれるのか?」


「ああ」


一護が差し出したストラップを両手で受け取り、大切に包み込む。


「大切にする。ありがとう」

にこりと笑顔を浮かべれば、一護は顔を真っ赤に染め、視線をルキアからそらす。


「別に、そんな高いもんじゃねぇよ・・」


そっぽを向いて、一護が呟く。その姿が愛しくて、ルキアは微笑んでいた。


「一護」


「あ?」


こちらを向いた一護の頬に両手を伸ばし、ぐいと顔を引き寄せる。
そして、頬に口付けを送る。


「ありがとう、一護」


赤く染まった顔を見られたくなくて、さっとその場を去った。



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