ブリーチ小説

□昼下がりのカフェテリア
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昼下がりのカフェテリア



昼食の慌ただしさを抜けた、午後の時間。


カフェの一角、表に面した席にルキアは座っていた。

手に持つのは、お気に入りの詩集だ。表紙に飾られた、四つ葉のクローバーと囲む花畑の写真。

書店に入ってすぐ、一目惚れして、買ったものだ。

裏に、そっと、描かれている
 "With love"


それが、心地よく、心に残って、何度も開いてしまう。


栞をはさんで、そっと、テーブルに置く。

手に取るのは、"ハニー・ラテ"

ハチミツのほのかな甘い香りが、ほっと、心をほぐす。


ちらり、と目に入った時計に、溜息が零れ落ちる。

ルキアは、通りに目をやる。ここにいれば、誰より早く、気付くことができるのに。


なのに。


彼は、まだ、やって来ない。淋しくて、きゅっと唇を噛み締める。





ようやく、"逢える"、と電話が着たのは、真夜中を過ぎた頃。
大好きなメロディーが流れて、飛び起きた。

耳にあてた携帯から流れるのは、大好きな人の声で。涙がでるほど、嬉しかった。
携帯から聞こえる声は、いつもと違って、落ち着いていて、別の人と話しているようで、落ち着かない。
でも、それが、耳に馴染むと、不思議なくらい、心を包み込んで離さなくなる。




携帯を開いて、名前を辿る。何時だって、かけるのは、ルキアの方だ。

それが、少し悔しくて、好きなのは、自分だけじゃないのかと、何度、悩んだだろう。



だから。

今日は、待ってる。

彼から、届くように。

早く、逢いたくて、声が、聞きたいけど。



どきどき、と心音が響き渡る。
約束の時間は、すぎた。

もう、三十分は、すぎるけど。


やっぱり、まだ、来なくて、ルキアは携帯を閉じた。






ふと、聞こえてくる足音。
見やれば、大好きな人の姿が、目に入った。


途端に、安堵が広がる。


派手な、オレンジ色をした頭に、ルキアはくすぐったくて、笑顔を浮かべる。

彼は、嫌っているけど、ルキアは、大好きだ。

太陽と同じ、明るくて、あたたかくて、いつも、心を照らしてくれる。

目の前にきたら、彼は、何て言うのだろうか。













「ごめん!ルキア、授業が長引いた。本当、ごめん!」


ようやく、到着した彼は、息を整える間もなく、ルキアに頭を下げた。

きっと、嘘ではないのだろう。

流れ落ちる汗を拭うこともせず、真っ直ぐ、ルキアを見つめている。

ブラウンの瞳に、今、自分が映っている。それだけで、心が喜びだす。


でも。今日は、駄目。


はやる鼓動を押さえるために、カップの残りを飲み干す。

ゆっくりと、テーブルに置くと、さっと、立ち上がる。

後ろを、振りかえらずに、扉に向かう。


「悪いが、私は、帰らせてもらう」




これは、宣戦布告。


扉を開けて、外に、飛び出す。





さぁ、追い掛けてきて。


あなたが、追い掛けてくれるなら、許してあげるから。





ルキアは、走り出した。

いつも、追い掛けるのも、待つのも。

ルキアの方だから。

たまには、いい。





背中から、聞こえてくる声に、ルキアは微笑んだ。







愛しい人のぬくもりが、届くのは、もう、すぐ。






END



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
パラレルです。

死神ではない、普通の大学生の二人です。

久しぶりのデート。なのに、肝心の一護さんが来なくて、待ちぼうけのルキアさん。

最後は、ルキアさんなりの、一護さんへのいたずらです。

可愛らしいルキアさんを、目指しました(笑)

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