ブリーチ小説
□秘密をしる重さ
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秘密をしる重さ
※秘密の織姫視点です。
一護と水色の攻防が続く中、それに気付いたクラスメイトたちが、色めき立つ。
聞こえてくる会話は、一護の想い人について。
先ほどのタロット占いが、まさか、こんな展開に繋がるなど、織姫は思いもしなかった。
胸の奥が締め付けられる。
「織姫・・・」
傍にいるたつきが、心配そうに声をかける。
それに、辛うじて笑顔を浮かべ、「大丈夫だよ、たつきちゃん」と、答える。
織姫とたつきは、遠巻きに一護たちを、見つめる。
離れた位置からも、一護の顔が赤く染まっているのが分かる。
「あんな黒崎君、はじめて見た・・・」
「うん、私も・・・」
近づくこともできず、織姫は、ただ、呆然と立ち尽くしていた。
きゅっと、不意に左手を握りしめられて、織姫は顔を上げた。
たつきは、何も言わず、ただ、前を見つめている。
何も言わないたつきの優しさが、手から伝わる温もりが、織姫には有難かった。
〜
「なぁんか、今日の黒崎、可愛いかったね」
「うんうん、真っ赤な顔してさ」
クラスの女子たちが、騒ぐ。
織姫は、たっと駆け出し、教室の外へと、飛び出した。
「織姫?」
それに気付いた千鶴が、呼び止めようと声をかけるが、それを、たつきが止める。
「ほっといてあげて」
向かうさきは、検討がついている。
きっと、さきほど出ていった幼なじみのもとだろう。
大丈夫だと、笑っていたけれど、きっと、無理をしていたに違いない。
織姫の気持ちが痛いほど分かるたつきは、静かに、その背を見送った。
〜
教室を飛び出した織姫は、真っ直ぐ、屋上に向かった。
一気に駆け上がったため、軽く息が上がるが、気にせず、扉を開ける。
一護を見つけると、織姫は息を吐いて、呼吸を整える。
そして、いつもの笑顔を浮かべる。
「くっろさっき君!」
フェンスの側に腰掛けていた、一護が顔を上げる。
「あ?井上か、どうかしたのか?」
周りを見渡すと、ほかの人たちの姿が見えない。
「浅野君たちは?」
「おー、昼飯買いに行った」
「そっか・・・」
「何か、用でもあったのか?」
「ううん、あの・・ね。黒崎君に、聞きたいことがあって・・・」
「何だよ?」
沈黙した織姫を不信に思った一護は、立ち上がり、織姫の傍まで来る。
「どうしたんだ?」
時折、垣間見える、一護の優しさ。
本当の彼に触れられる気がして、嬉しかったが、今は、悲しい。
織姫は、唇に力を入れ、笑った。
「黒崎君の好きな人って」
途端に、一護の顔が赤く染まる。ふいと、顔を背け、織姫に背を向ける。
「その話は、マジ勘弁な・・」
織姫は吐息を零すと、その背を見つめる。
大好きな人の、少し猫背ぎみで。けれど、誰よりも大きな背。
この背で、大切な人たちを、守るのだ。
「朽木さん、でしょ?」
返事はない。
しかし、耳まで、真っ赤に染まっている。
「あいつには、言うなよ」
照れている為か、頭をガシガシとかいている。
胸が、ズキリと、痛んだ。
それでも。
嫌いになんて、なれない。
振り返った一護に、織姫は、微笑んだ。
「もちろんだよ!」
遠く離れた場所にいる彼女を想う一護が、いとおしい。
彼の瞳に、自分は映っていない。
でも。
「朽木さんに、会えると、いいね」
一護は、空を見つめる。
「ああ」
その視線のさきには、きっと、彼女の姿が映っている。
〜
秘密の先にあった答えは、重くて、心が悲鳴を上げる。
それでも、彼らを、嫌いになんてなれない。
苦しくて、苦しくて、たまらなくなるけれど、まだ、好きでいてもいいだろうか。
もう少し、もう少しだけ。
END