ブリーチ小説
□正直者になりましょう
1ページ/1ページ
正直者になりましょう
※「雨上がりの夏の気配」での、黒崎家の様子です。
「あ〜!!もう、ウザイんだけど!!イチ兄」
遊子の熱の具合を診ていた一心は、ビクッ、と身体を震わせ、声の主を慌てて見る。
「か、夏梨、お父さんびっくりして、聴診器落としちゃうところだったぞぉ!」
ガバッ、と立ち上がり、ウインク☆してみせる。
「黙れ、ヒゲ!!いい年こいて、落としちゃうとか、言うな!!気色悪い!!」
夏梨が飛び蹴りをくらわすと、一心はばったりと床に倒れこんだ。
しくしく、と聞こえてくるすすり泣きにベッドの中にいた遊子が、慰めの言葉を掛ける。
「大丈夫?お父さん」
えぐえぐと泣き続ける一心の頭を、よしよしと遊子が撫でる。
「遊子、ほっといて、寝な。熱、下がんないよ」
苦笑いしながら、布団をかぶり直した遊子の傍で、一護は所在無さげに立ち尽くしていた。
と、言うよりも、どうするべきが悩んでいる、と言ったほうが正しいかもしれない。
「あー!もー!そんなに、気になるんだったら、さっさと行けば!!」
今日は機嫌が悪いのか、それとも、損ねたのか。
どちらにしても、ここは、穏便にすますべきだろう。と、一護は心の中で頷く。なにせ、ここには、病人がいるのだし。
「別に、なんもねーよ。それよりも、夏梨、遊子が寝れねぇだろ。だから」
と一護は続きを飲み込んだ。
ぎりっ、と夏梨が睨みをきかせる。その姿は、そんじょそこらの不良も、かなわないのではないか?
いやいや。問題はそこではなくて。
一護は、額に汗を掻きはじめていた。
「か、夏梨?」
遊子のそばにいた一心まで、顔を青くして夏梨を呼ぶ。
「ウザイ、て言ったの、聞こえなかった?イチ兄」
ダラダラと流れてくるこれは、冷や汗か?
一護はごくりと唾を飲み込んだ。
「駄目だよ、夏梨ちゃん」
やんわりと。でも、はっきりと遮ったのは、遊子だ。
般若の如く怒っていた夏梨が、言葉を止める。
「ね、お兄ちゃん。約束してるんでしょ?お姉ちゃんと」
「え?」
「私が、風邪ひいちゃったから、会いにいけないんでしょ?」
「んなわけねーだろ。変な心配してねぇで、ほら、早く寝ろって」
半ば強引に、布団を遊子にかける。
確かに、約束はある。でも、遊子を放ったまま、行けるわけがない。
今回は、諦めようと携帯を握りしめたときだった。
「違うの」
布団から、赤い顔を少しだけ出し、遊子が言う。
「私が、お兄ちゃんに、お姉ちゃんの所に行ってほしいの。きっと、お姉ちゃん、お兄ちゃんがこなくて、淋しがってる」
一護はびっくりして、まじまじと遊子を見つめる。
「遊子がそう言ってんだから、早く行きなよ。イチ兄。ルキ姉、待ってるよ」
ここまで、言われたなら。
仕方ない、と溜息をついて、扉に向かう。
「悪い。少しだけ、外、出てくる」
バタバタと、階段を下りる音がして、そして、騒がしい音が遠退く。
遊子と夏梨は、顔を見合せ、安堵の息を吐く。
「まったく、世話の焼ける兄貴だな」
しみじみと呟く一心に、二人はその通りだと笑う。
「イチ兄には、ルキ姉がいないとね。あーあ、いつになったら、お嫁に来てくれんだろ」
「そしたら、ずっと一緒にいられるよね?お姉ちゃんと」
クスクスと笑う二人の声は、彼らには、まだ届かない。
END
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ギャグ(笑)です。
夏梨ちゃんは、恐らく、黒崎家で一番恐い。その上をいくのが、遊子ちゃん。にっこり笑いながら、有無を言わせない。凄い、双子です。
一護さんは、今から、尻にひかれてます(笑)
遊子ちゃんも夏梨ちゃんも、ルキアさんが大好きなのです。
ちょっとした小話でした。