ブリーチ小説
□秘密の答え
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※秘密の続きです。
秘密の答え
キーン、コン、カーン、コンー・・・・
チャイムの音が、響き渡る。裏庭にいた一護は、ようやく起き上がる。寝転んでいたために、ついた草を払う。
(昼休みか・・・)
校舎から、騒めきが聞こえ始める。
一護は、溜息を一つつくと、歩き出した。
教室に戻るには、抵抗があったが、鞄を置いたまま帰るのも、気が引ける。
「あーあ、何なんだよ・・・。チクショウ・・・」
〜〜
教室に戻ると、案の定、全員の視線が痛かった。
それをおくびにも出さず、一護は教室に入る。
席につくと、何やら言いたげのケイゴと、満面の笑みを浮かべた水色が、素早く一護を囲む。
「一護、どこ行ってたんだよぉ、さみしーだろ!」
擦り寄るケイゴに対し、一護は無視を決めむが、そうそう甘くはない。
「ねぇ、一護。好きな人、いるんだって?」
何でもないかのように、笑顔で水色が、問い掛ける。
一護は一瞬、ほんの一瞬、動きを止めた。
「顔、赤いよ?」
水色の追及は、容赦がない事は、一護自身、身に染みていることだ。
だからこそ、知られるわけには、いかないのだ。
「べ、別に!何もねーよ。関係ねーだろ!」
「ムキになっちゃって。図星なんでしょ?」
「う・・・・」
こうなれば、最早、逃げ道はない。
完全に、追い詰められた事に、一護はようやく気付いた。
(あーあ、何なんだよ・・、チクショ・・・・)
〜
「で、どんな子なの?あ、もしかして、クラスの子、とか?」
完全勝利をものにした水色は、満面の笑顔で質問しはじめる。
やっぱり逃げればよかったと悔やんでも、後の祭りだ。
一護は、こっそり、溜息をついた。
「別に、同じクラスじゃねーよ」
(元、クラスメイトだけど、な)
こうなれば、自棄だ。と言わんばかりに、一護の口から素直に答えが、零れ落ちる。
それに気を良くしたのか、水色の問い掛けは、とどまる気配をみせない。
「どんな子?可愛いの?告白はしたの?」
水色が間髪入れず、問い掛ける。
その早さに、一護は目を丸くするしかない。
「え・・・」
ようやく理解した一護は、一瞬動きを止めた後、ますます顔を赤くした。
「え・・・・、な・・・」
一護の狼狽える姿に、いつの間にか集まっていたクラスメイトたちから、歓声が上がる。
一護はむっすりと黙り込んだ。
〜
「告白できるなら、こんなに、悩んだりしねーよ」
黙り込んだまま、徹底抗戦に持ち込もうとしたが、あの水色だ。
一護のやろうとしていた事など、すべてお見通しで、結局、喋らされる羽目になった。
「どうして、できないの?」
自分は、人間で。
彼女は、死神だから。
「無理なんだよ」
ルキアが好きだ。そばにいたい。
心の中にあった想いを自覚すれば、こんなにも、あっさりと、想いが溢れだす。
(あいつは、自分で選んだんだ。戸魂界に残るって。あいつが選んだことに、口出しなんかできねぇよ・・)
本当は、好きになっては、いけなかった。
出会うことすら、なかった。
それなのに、歯車が噛み合うかの様に、どんどん引かれていった。
一護は、いつの間にか、微笑んでいた。
周りのクラスメートは、息を呑んだ。
「どんな子なの?一護が、好きな人って」
水色の問い掛けに、一護は窓の外を見つめた。
艶やかな黒髪の、生き生きとした瞳が浮かぶ。
『一護・・・』
少し低めな、けれど、透き通る声が蘇る。
気付けば、そっと、彼女の名をよんでいた。
「一護?」
水色訝しげに見つめているのに気付いて、一護は「何でもない」と、答える。
「そうだな・・・。すげぇ、気が強くて」
初めて会ったときも、傲慢な態度で目の前に現れた。
「口より先に、手が出るし」
喧嘩になっても、いつも負けていた気がする。
彼女の方が、長く生きているのだから、仕方がないのかもしれない。
「自分の事より、人の事ばっか心配するくせして、俺の前じゃ、よく泣くし。変なところで、子供っぽいし」
なのに、時折、はっとするほど、綺麗に見える。
目が話せなくなるのだ。
「小せぇくして、よく食うし。ああ、白玉が変に好きで、ウサギグッズに目がなくて」
「一護」
水色がくすりと笑った。
「何だよ?」
「本当に、好きなんだね。その子のこと」
「別に・・・」
照れて、顔を真っ赤にしても、一護は否定しなかった。
〜
この胸の奥にあった想いは、溢れはじめた。
もう、止めることは、できない。
彼女が、好きだ。でも。
伝えることのできない想いは、どこへと向かうのだろうか。
答えは、誰にも、わからない。
END