ブリーチ小説

□月夜の再会
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月夜の再会



静かな夜。
暗闇の中、地獄蝶が、舞う。
かの地より、漆黒の使者を引き連れながら。

そして、途切れた運命の糸が、再び、彼らを繋ぐ。

静かに、静かに。




風呂上がり、一護は冷蔵庫から麦茶を取出し、コップに注いだそれを、一気に飲み干す。
ふぅっ、と一息ついたとき、背中に衝撃を感じた。
気が付くと、床に倒れこんでいて、一護は何が起こったのか理解出来ない。
しかし、それも、仁王立ちして自分を見下ろす一心の姿が目に入るなり、瞬時に理解する。


「クソじじい!!何しやがんだ!!」


ばっと立ち上がり、一心の胸ぐらを掴む。


「うるせーぞ、馬鹿息子が。てめぇのことなんか、知るか。緊急事態だ」


「あ?」


「夏梨と遊子が、熱をだした」


「何!?」


駆け出した一護を、一心が止める。ただ、止めるのではなく、足を引っ掛けて、だ。
明らかに油断していた一護は、派手に転んだ。


「何してんだ!!糞親父!!」


「今は、薬が効いて寝てる。静かに寝かせてやれ」


うるさくしているのは、一心の方なのだが、一護は妹たちのことを思い、素直に聞き入れる。
不意に、財布を投げられた。


「何だよ」


「買い物、行ってきてくれ」

「今からかよ」


「当たり前だ。スポーツドリンクが、切れてんだ。あと、桃もな。夏梨が、食いたいそうだ」










しぶしぶながらも、妹たちのため外に出た一護は、月の明るさに、足を止めた。

(明るいな・・・。そっか、もうすぐ、満月だもんな)


月に照らされ、影か落ちる。ひっそりと、静かに、町は、眠りに就こうとしている。
死神代行として、一護はこうして、夜の町を眺めることが、多くなったが、静かだと思うことは、一度もなかった。
それは、きっと、隣に彼女がいたからだろう。

夜の町並みは、懐かしいのと同時に、胸の痛みを起こす。


(あいつ、今、何やってんだろうな)

初めて会ったのも、夜だった。


「また、逢えたりしてな・・・」


一護が、歩き出したときだった。
ドンと、激しい音と共に、砂ぼこりが、辺りを覆う。

「何だよ」


砂ぼこりがはれると、現われたのは、一匹の虚だ。
一護はとっさに構えるが、代行証もコンもいない。
死神化するすべを持たないことに気付くと、唇を噛みしめた。


(くっそ!!何だって今でてくるんだよ!)


虚が一護に気付いたのか、顔をこちらに向ける。
そして、虚が大きな口を開けた瞬間、悲鳴が轟いた。

一護の視界に、漆黒の衣が、よぎる。

キーン、と刀の音が響く。
一護は、目を見開いた。


「観念するがいい」


小柄な少女が刀をかまえると、虚の姿は消えていった。
静寂が、戻りはじめる。

月明かりの中、影が、浮かび上がる。


「久しぶりだな、一護」


振り返り、微笑む彼女は、紛れもなく、一護が誰よりも、逢いたいと願っていた人だった。




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