ブリーチ小説
□君にさよならを送ろう
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携帯を片手に、届いた招待状を眺める。
可愛らしいうさぎをモチーフにした招待状は、彼女らしくて、一護はつい、笑ってしまった。
何コール目だろうか。届いたのは、懐かしい、彼女の声だ。
『一護か?』
出た瞬間、名前を呼ばれて、一護は吹き出した。
『貴様、電話に出た瞬間笑うとは、何事だ。それも、こんな朝っぱらから』
ああ、変わらない。彼女は、何一つ、変わっていない。
一護は目を細め、招待状を見つめる。
「わりぃ、わりぃ。お前が、変わってねぇから、つい、な」
『そうか?それならば、よいが』
不思議そうに、彼女が言う。きっと、小さな身体を傾かせ、唸っているのだろう。そう、易々と想像出来たことに、一護は驚いた。
もう、別れてから、何年も逢っていないというのに。可笑しなものだと、一護は苦笑いする。
「結婚、するんだってな」
『ああ。届いたのか?』
「おう。さっき、ポストに入ってた」
どちらともなく、口を閉ざす。
一護は、朝焼けに浮かぶ街並みを見やる。
このマンションからは、街一体が見渡せる。引っ越しを手伝ってくれた友人たちには、景色が悪いと不評だったが、一護はむしろ気に入っている。
窓から街並みを見下ろすたび、新しい自分がそこにいるようで、心が動き出すのだ。
『なぁ、一護』
「ん?」
『もしも、私たちがあの時、別れていなければ、何か変わっていたと思うか?』
朝日が、昇る。
眩しい光が、部屋の中まで差し込み、街を照らしだす。
今日のはじまりだ。
「たぶん、変わんねぇと思う」
『そうだな。私も、そう思うよ』
彼女が、吐息で笑う。それが無性に懐かしくて、一護も気付けば、笑っていた。
「まだ、言ってなかったな。ルキア、結婚、おめでとう」
『ああ、ありがとう。一護』
ふわりと、彼女が笑った気配がした。
『式には、来てくれるのだろう?』
期待に満ちた声に、一護は苦笑いせずにはいられない。
「わりぃ、ルキア。行きてぇのは、山々だけど、出張入ってんだ」
『そう、か。ならば、仕方ないな』
「電報、贈るからな」
『ああ、ありがとう』
「幸せになれよ」
『ああ』
電話が、途切れた。
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