封神小話

□願うのは

願うのは




崑崙山から見える星空は、降り注ぐ光のように、空一面を覆う。


「あ、ほら、天の川だ」


隣に座る普賢が指差した先には、悠々と流れる星の道。


「何度見ても、壮観だのぅ」

そっと、触れた手を絡めれば、触れ合うのは互いの唇。
軽く何度も、触れるだけの口付けを交わす。


「望ちゃんは、願いごと、決めたの?」


「桃かのぅ」


「望ちゃんらしいな」


くすくすと、愛しい人が笑う。


「お主は、何を願うのだ?」

「僕?」


首を傾げ、微笑む姿は、あどけなく幼くもある。
夜、己の腕の中でみせる、艶やかな姿が、嘘のようだ。


「そうだね。僕は、君が幸せであるよう願うかな」


普賢は真っ直ぐ、星空を見上げる。
その横顔が、悲しく見えて、太公望は息を飲んだ。


「望ちゃん?」


「それは、叶わぬ」


普賢は、困ったように、太公望を見つめる。
それが、泣いているように見えた。


「もう、叶っておるからの」


「え?」


しっかりと普賢の瞳を見据える。


「お主が傍にいてくれるだけで、わしは幸せなのだ」

ふわりと、普賢が笑う。
今度は、本当に、幸せそうに。
優しく、太公望に微笑む。

あなたが、笑っていてくれるだけで、幸せだから。

どうか、その笑顔を、いつまでも。

太公望は、静かに、星空を見上げ、微笑んだ。



END

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