最後の不老忍 ブック
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最後の不老忍
ソワソワと、部屋の隅から隅を行ったり来たりを繰り返す、我が主、伊達輝宗に呆れて思わず溜め息を零す。
僅かな溜め息だったが、輝宗様には聞こえたらしく鬼の形相でこちらを見たかと思うと唾を飛ばす勢いで声を上げた。
「夜壱! 溜め息をつくとは何事だボケェ!
義が…義が我が子を産もうと命を掛けていると言うのに、そのような溜め息をついてはっ!」
義とは、輝宗様の正室でもある義姫様の事だ。
身ごもり、今日が出産となった義姫様に城中大騒ぎで同盟の事で遠出するはずが途中で引き返し同盟先には忍びを向わした。
この世界? 過去? に芦崎夜壱として転生し、早17年。
8歳だった"俺"は25歳の俺へとなった。
最初は転生と言うのが認めれなかったし、全てが夢だと思っていた。
結局は認めざるおえなくて、今では認めているし、これが俺なんだと受け入れている。
輝宗様の父でもある晴宗様には良くしてもらい、晴宗様に仕える元二殿には忍びとしての哲学やら基礎能力などを叩きこまれた。
そのお陰で16歳では結構な伊達家での忍びとしての地位を得て、"俺"が仕えていた彦太郎から輝宗へと元服をした輝宗様に仕え始めた。
仕えて9年だか、それまでにも大分親しかったで信頼は家臣より厚いんじゃないかって俺は思っている。
自意識過剰でもいい。
俺が意識を軽く飛ばしてハッと気付き、輝宗様を見れば発狂しているのか、叫び転がっている。
…この部屋に俺だけでよかったな。
俺口固いからな。
「義ィィィ! よおおおしいいい!」
一国の主とは思えない、情けない姿に溜め息しか生まれてこない。
再び意識を別に飛ばしていたいが、このままの状態だと何時家臣が入って来て主人の姿に驚愕して失望するかも分らない。
晴宗様しか知らないから、晴宗様贔屓になるが、晴宗様達先代当主が築き上げた伊達家の信頼をこんな事で失うのは正直気が引ける。
仕方なく、口元を覆っていた布を外す。
「輝宗様…」
「よっしいいいい!」
…緑の恐竜懐かしいな。
「輝宗様、…輝宗さ―…」
「義が心配だ! 今すぐにでも駆け付け――」
「輝宗!」
「何だ!?」
グイッと、輝宗様の腕を引き、僅かに下にある目を見、そのまま目を細め口元に笑みを浮かばせる。
「落ちつけよ」
驚いた様な顔をする輝宗様。
その間抜けな顔が面白くて肩を揺らせば、無駄に整っており、歳が増す事に色気と言う物が増えている顔が視界いっぱいに広がる。
◆ ◇ ◆
無言になり、動こうとしない輝宗様の上に座る。
もしも、こんな様子を他の誰かに見られたりすれば簡単に俺の首は飛ぶだろうが、生憎輝宗様からは"せめて2人っきりの時は友人として"とか言われたから友人の様に扱っている。
何も間違ってはいないぞ。
「落ち着いたか」
「はい」
腰を上げて輝宗様の上から退く。
いててと、俺に接吻しようとして殴られた頬を押さえながら胡坐を掻いて座った輝宗様は苦笑いを零しながら悪かったな、と一言だけ言った。
本当に謝っているのかイマイチ分らないが昔から笑いながら謝罪をするのでああ、と返事を返して俺もその場に座る。
「名は決めたのか?」
「当たり前だ! 余りの名前の良さに腰を抜かせ!」
ギャーギャー喚く輝宗様をあしらい、襖に顔を向けてから襖が開く前に天井裏に入る。
「失礼します! 輝宗様! 元気な男の子に御座います!」
「何!?」
天井裏から輝宗様が走るのに付いていく。
◆ ◇ ◆