拝啓、
□1・遭遇
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「僕の名前を呼んでくれませんか。」
そう私に言ったのは、ゆらゆらと浮かんだ人間もどきだった。
×××
「だから、無理だってば。」
私は誰もいない図書館の地下で、人気のなくなった本をあさっていた。
上にあるめぼしい本は既に読破済みなのだ。
「そんなこと、言わずにぃ。」
面白そう。と思った本を読んでいる私に、遠慮という言葉を知らないらしい人間もどきは話しかけてくる。
「生きるか死ぬかの瀬戸際なんですよぉっ!」
「死んでんだろ、どうみても。」
図書館の外でばったり出会い、そのままついてきた人間もどきは…
まぁ、簡単に言えば幽霊だった。
「生き霊です。」
「威張るな。」
外見年齢10代後半なそいつは一応、男で、なかなかに美少年と言える顔をしていた。
だが、顔は良くても頭は悪いらしい。
「威張ってなんかないですよ。」
と言うわりに、両腕を腰にあて、胸を反らし、にこにこしている姿は誇らしげである。
「生き霊であることが誇らしいのか…。」
「まぁ、そりゃ、悪霊とかより遥かにマシじゃないですか。」
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