暁ナル
□鮫の涙
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「これはこれは。九尾の人柱力。」
「…お前はっ!!」
任務で里外に出ていたナルト。
その休憩中、賑わう他里のど真ん中でナルトと男は会った。
「こんな所で会えるとは。」
「お前は、半魚人!!」
「…鬼鮫です。酷すぎますよ、ナルト君…。」
「わ、悪ぃってば!つ、つい、ははは!」
と誤魔化すように笑って見せるナルトだが、半魚人と呼ばれた鬼鮫は深く傷付いた。
「謝ってるんだからそんなに落ち込むなってばよ、か、顔色悪いぜ!青く、」
「…それはもともとですよ…。」
貴方って顔に似合わず酷い事言いますね、と更に傷付いたらしい。
ガックリと項垂れている。
涙さえ浮かんで見えた。
「いやぁ、ははは!ところでこんな所で何してんだよ?今日はイタチ居ないのか?」
「…居ません。」
「じゃあ一人で何してんだってば?」
「…団子を買って来いと使いに。所詮私なんかパシりなんですよ、」
「ぱ…、つ、使いに…、へ、へぇ…、」
言う事なす事裏目に出てしまうナルト。
どうしたものかと頬をぽりぽり掻いた。
「いつもそうですよ、傀儡に射す油を買って来いだの、粘土買って来いだの…、リーダーなんか新
しいピアスに変えるから私に買って来いって、しかも変なの持ってきたら罰を与えるだなんて…。おまけに小南さんまで私に化粧品を頼んで…!」
私だって暁の一員なんですよ!それなのにっ、と本格的に泣き出してしまった。
「ちょ、半魚…、鬼鮫さん泣くなってばよ、」
困った事になってしまった。
大の男が大勢人が居る前でしくしく泣いている。
その光景は実に異様だろう。
周りでは、泣き出す鬼鮫の側を歩いていた人達がザザザ、と音を立て逃げてしまう始末。
そりゃそうだ、と納得してしまうナルトも、逃げ出したいその内の一人だったりするのだが、今の状況からはとても言えたものではない。
「き、鬼鮫さん、落ち着けってば、」
「どうせ私はパシりでしか無いんですよ!」
「そ、そんな事ないってばよ、」
「そんな事有るんです!うぅ、私なんか、私なんかぁ!」
(ちょっと、マジかよ…、)
何を言っても裏目に出てしまう。どうしたら良いのか、途方に暮れてしまう。
しかし、困ってる人を放っておけないのがナルトだ。
例え、相手が悪の組織でも。
チラッと休憩時間を気にして、ナルトは鬼鮫に優しく声かけた。
「…俺で良かったら愚痴
聞くってばよ?」
すると鬼鮫は顔を上げ、ナルトを見つめるとまた涙を流した。
「うぅ、君って子は…!何て優しい子なんですか!」
そしてナルトに抱き着き、嗚咽を洩らし、更に泣いた。
抱き着かれたナルトは、ツンと香る磯の臭いに、鼻を押さえたい衝動に借られた。
だが、それをしなかったナルトは心の中で自分を褒めた。
暫くして落ち着いた鬼鮫と共に、手近な店でお茶をする。
鮫のような大きな男が、大きな刀を背に、ティッシュで鼻を咬んでいる姿は何とも言えない。
その横で、無理矢理笑顔を作るナルト。
(作り笑いの笑い方、サイに習えば良かった…、)
「はあ、すいません、あんな道端でみっともない…、恥ずかしくてもうこの里には来られませんね…、」
「よ、良くあるってばよ…、ははは、」
「………、」
「…、で、でさ!暁のメンバーと上手くいって、」
「……っ、」
無いらしい。
鬼鮫は、くしゃっ、と顔を歪ませると小さな瞳一杯に涙を浮かばせた。
そして徐々に日頃の不満を話し出した。
ストレスを発散するように。
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