暁ナル
□わんダフルデイズ・2
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【角都、子犬に懐かれる】
「─終わった」
「おお!さすが角都!」
子犬の治療を角都にしてもらい歓喜の声を上げるデイダラ。
「金にならん事を何故俺が─」
「でもこいつ可愛いだろ、うん?」
「俺は金の話をしてるんだ」
その言う割には…と、角都の手元見てみると優しく子犬を撫でていて。
(やっぱり可愛いんだな、うん)
角都の意外な一面を見て吹き出しそうになる。
「おい、ミルクだ」
と、そこへサソリがやってきた。
ほら、飲め。
命令口調ではあるがやはりサソリも子犬が可愛いようで。
角都とデイダラを押し退け、子犬の前へ腰を下ろした。
「おい、旦那!ズルいぞ!」
「うるせぇな。でけぇ声出すな。ナルトがびっくりすんだろ」
当たり前のように子犬をナルトと呼ぶサソリ。
「ナルト?」
「…なんだよ?」
聞き返す角都に、何が可笑しい?とでも言いたげに睨み付けるサソリ。
「この犬、ナルトって言うのか?」
「オイラが付けたんだ!」
「あの小僧の事か?」
「似てるだろ、うん?」
そんな風に言われ角都は顔を顰めた。
「もっと金運の上がるような名前にしたらどうだ」
「お前は金の事ばっかだな」
どう言われようと構わないが、犬にまで小僧の名前を付けるのか。
と言うか…。
「飼うのか?」
「飼うだろ、うん」
「当たり前だ」
即答のデイダラに鼻で笑うサソリ。
ナルトはくんくんと匂いを確かめると、ミルクを舐め出した。
「他の奴らの意見も─」
「そんなもん知るか」
「そうだよな、旦那。ナルトはもう暁の一員になったんだ」
「犬嫌いがいたらどうするんだ」
「知るか」
「ナルトを捨てろって言うのか、うん!?」
「俺に怒鳴るな。他の意見も必要じゃないのかと言ってるんだ」
「じゃあお前はどうなんだ?」
サソリに問われ、黙る角都。
「そうだ、角都はどうなんだよ、うん?!」
興奮するデイダラ。
「俺は─」
「ァン!」
その時、ミルクを飲み干したナルトがゆっくりと腰を上げた。
自然と皆の視線はナルトになり。
「あ!まだ歩かない方が良いぞ、ナルト!」
デイダラの声も聞かず、おぼつかない足でサソリの横を通り過ぎると、ナルトは角都の前でクゥーンと鳴いた。
「…なんだ?」
しゃがみこむ角都に尻尾を振るナルト。
角都はそのまま胡座をかいて座った。
すると、ナルトは待ってましたとばかりに角都の足の上に乗り、そのまま体を丸め。
「…」
それを見ていたデイダラとサソリは顔を見合わせた。
「…何で角都に懐いてんだ」
「怪我の手当てしたからだろ…うん」
眉を寄せる二人に、角都はため息を吐くとそっとナルトの背を撫でた。
ナルトは気持ち良さそうに目を閉じるとそのまま数分もたたない内に眠ってしまった。
「…で。飼うのか飼わないのかどっちなんだよ、うん?」
「反対じゃねぇだろうな」
「…」
ナルトを起こさないよう声を下げて聞く二人に角都は顔を背けて言った。
「俺は飼わないとは言ってない」
「…ふん」
「そりゃそんなに懐かれたらそうなるよな、うん」
「…」
すやすやと眠るナルトを見つめる。
怪我の手当てをしてもらい、ミルクでお腹を満たし、暖かい場所で眠る。
ナルトの顔は何とも幸せそうで。
デイダラとサソリは笑みを浮かべた。
これから金がかかる。
そう思う角都だが、満更でもなさそうで。
デイダラやサソリに気づかれる事なく、角都もまた笑みを浮かべるのであった。
END
2019.2.15