サスナル
□一番の被害者
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「ナルト!ナルトォ!」
一応息はしているが、頬を叩いても、揺さぶっても一向に目を覚ます気配のないナルト。
サスケのたんこぶの出来た額から冷や汗が流れ落ちる。
「…ナルトっ、」
何故こんな事になってしまったのか。
ただ純粋に追いかけっこしていただけなのに(ナルトは嫌がっていた)。
ドジな愛しのハニーは自分に夢中過ぎて電信柱に気付かなかったんだ(夢中は夢中だったが意味が違う)。
「何て可哀想な俺のナルト、」
と、どこまで勘違いすれば気が済むのかこの男。
優しくナルトの顔を撫でるサスケ。
暫くしてハッとした。
そして徐々に募っていく憎しみ。
サスケは目の前のものに殺意を向けた。
(全てはこいつが悪いんだ!!)
ナルトをそっと地面に寝かすと、ちょっと待ってろよ、と一言呟き徐に立ち上がった。
ずかずかと向かう先は、只今サスケの天敵になってしまった運の悪い電信柱。
「てめぇがそんな所に突っ立ってんのが悪ぃんだぁ!!」
ボカボカ、ゲシゲシと罪の無い里の電柱にあたるサスケ。
完全にお門違いである。
「ナルトが記憶喪失にでもなったらどうすんだぁ!?え、死んだらてめぇどう責任取ってく
れんだよ!?えぇ!?」
余りの騒ぎに何だ、何だと集まる里人達。
「おらぁ!何とか言ってみろってんだぁ!! 」
無言の電信柱。
無論口を聞く筈が無い。
しかし。
「ああ、そうかよ!謝る気ねぇんだな!!上等じゃねぇかよ!ぶっ壊してやらぁ!!」
と、千鳥発動。
サスケの怒りは最高潮に足していた。
すでにボコボコにされ、パラパラと破片が崩れて落ちているのだが、息の根を止めてやる(元々息はしていない)とばかりに千鳥を電柱に喰らわした。
破壊音を立て、倒れ行く罪の無い電信柱(もはや柱とは言えない)は、誰の家か知らないが、近くに有った屋根の上に無造作に倒れた。
キャー、と悲鳴を上げて外に出てくるその家の住人。
この時サスケはまだ気付いていなかったのだ。
後に起こる事を…。
やりきった、とはあはあ、肩で息をするサスケ。
イライラと周りを見れば。
「頭でもおかしいのか?」
「あれって里抜けしたうちはサスケじゃないのか!?」
「横たわっているのはうずまきナルトか!?」
ボソボソとサスケに非難の目を向ける里人達。
「てめぇら何見てんだよ!?消えやがれ!!」
ヒッ、と誰もが小さ
く悲鳴を上げ辺りに散って行く。
チッ、と舌打ちをしてナルトの方を振り向けば。
目を覚ましたのだろうか、唸っていた。
「ナルトォ!!」
「ぅ…、」
慌てて駆け寄り丁寧に抱き起こす。
「大丈夫か!?電柱の野郎は退治したぜ!もう安心だ!!俺が着いてるから心配はいらねぇ!!」
お前がいるから余計心配だ、と隠れて見ている里人全員は思った。
「…ぅ、」
「ナルト、ナルト?」
問いかけるが、やはりぶつかった衝撃が強かったのか、眉を寄せ唸るばかりで目を覚まさない。
「畜生っ!!あの野郎の所為で!」
悔やんでも悔やみきれない(?)サスケは復してもハッと気付いた。
そして呟く。
「…眠り姫…。」
そのサスケの呟きに里人達誰もがまさか!?と背に嫌な汗を流した。
「ふっ、」
次第に肩を震わせて笑うサスケ。
「そうだった!眠り姫は王子のキスで目覚めんだ!!」
そう、抜け忍うちはサスケはこの為に里に、ナルトの家に侵入したのだ。
大蛇丸のアジトで、考えるのは兄イタチの事よりも、愛しいナルトの事ばかり。
思い出すのは、輝く金髪、空のような瞳、そして自分に向けられる笑顔(決してサスケにではな
い)、更に初キスの思い出(単なる事故)。
そんな事を考え、たまたまやっていた映画を見てサスケは居ても立ってもいられなかった。
「金髪、青い瞳、ナルトとチュー!」
どう見ても主人公は間違いなく俺達だな!
「待ってろよ眠り姫ぇ!!」
と、勘違い男は里に侵入したのだ。
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