サスナル

□未知との遭遇
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「――本当に、お前は可愛いな。」

「そんな事ないってばよ!俺ってば男だし!」

「何言ってんだ、ウスラトンカチが。照れんなよ。」

「…て、照れてねぇってばよ、だけど、サスケに言われるなら嬉しいってば。」

「ふっ、素直なウスラトンカチも可愛いぜ。」

「サスケ…。」

「ナルト…。」



(…ナルト君!?)

此所は大蛇丸のお屋敷。

薄暗い廊下を歩いていたカブトは、ボソボソと聞こえてきたこの会話に足を止めた。

(おかしいな。大蛇丸様は出掛けてるし、サスケ君と僕しか居ない筈なのに…、)

何故話声がするのだろう、とこの部屋の主、サスケの部屋の扉に耳をくっ付けた。


「さあ、ナルト。今日は何して過ごす?」

「俺ってば修行したいってば!」

「お前はいつもそればっかだな。」

「だ、だって早くサスケに追い付きたいんだってばよ!」

「お、お前って奴は…。」

「だって俺ってばサスケに釣り合うような男になりたいんだ!」

「くっ!このウスラトンカチが!何て可愛い事言いやがる!」

「可愛くないってばよ!」

「このおバカさんめ!俺に釣り合う奴なんてこの世にお前だけしかいないんだよ!」

「サスケ!」

「ナルト、愛してるぜ!俺にはお前だけだ!」

「サスケ!」

「ナルト!」


(………、)

カブトは驚いた。

いつナルトが此所に来たのか。

何故こんな会話をしているのか。

それ以前に、二人はどう言う関係なのか、と。

(サスケ君、ホモだったのか…、)



それにしても、と今度は眉を寄せた。

ナルトの声がどうもおかしいのだ。

(こんな声だったかな…?)

声変わりか?と不思議に思い、そっと音を立てないように、鍵穴を覗き見るカブト。

しかし見えるのはこちらに背を向け、何やら忙しく腕を動かすサスケだけ。

(ナルト君は何処だ?)

見える範囲で目を動かしてみるが、ナルトの姿は確認出来ない。

どう言う事なのだろう。

(…何で居ないんだ?)

いくら気配を探ってみても感じられない。

あのドタバタ忍者が気配消しをいつ覚えたのか。

(隅にでも居るんだろうか?)

ナルトが居るなら大蛇丸に報告しなくてはいけない。

それとは別に、好奇心からか、はたまた仕事柄か性格上か、どうしても確認しないと気がすまないカブトは、ドアノブに手を掛けた。


「ナルト、もう我慢出来ねぇ!今日は寝かせね
ぇからな!」

小さく音を立てて開く扉。

「…やっ!サスケ恥ずかしいってばよ!」

先程よりも声が大きく聞こえてくる。

「嫌よ嫌よも好きの内ってな!」

そして、ふはは、とサスケの気味の悪い笑い声が聞こえて。





――ガタッ!

(しまったっ!)

それに背筋を凍らせたカブトは音を立ててしまった。


その瞬時、静まる部屋。


そして、ゆっくりこちらを振り向くサスケ。

カブトは慌てて舜身しようとしたのだが。





サスケの手に握られているものを見た瞬間、体が硬直してしまった。

全てを悟ってしまったのだ。


無表情でこちらを見るサスケ。

呆然と立ち竦むカブト。

「…あ、あの、」

無言で圧力をかけるサスケの手の中には。

自分で作ったであろう、ナルトのフィギュア人形が握られていた。





つまり、サスケは人形と会話していた訳だ。

ナルトの声がおかしく感じたのも、姿が見えないのも、気配が無いのも当たり前である。


全部サスケの一人芝居なのだから。


まずいものを見てしまった、とカブトは滝のように流れる汗を止められない。


だが、構わずサスケは口を開いた。

「…何か見たか。」

「気の所為です!!!」

「だよな。」

「です!!!」

「大蛇丸に、」

「言いません!ははは!」

「男に二言は、」

「無いです!!!」


この日、カブトは二つの秘密が出来た。

一つはサスケ。


もう一つは、余りの恐怖に夜、人生で初めてお漏らしを経験してしまった事だった。


END

2009.9.8
 

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