カカナル
□普通じゃない
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「…じゃあ、話すだけで浮気なら。触れた」
「相手殴るね。……いや殺すかも」
「……は?」
何をそんな驚くのよ。
何か段々苛ついてきたんだけど。
当たり前の事なんで聞くかな。
「何で誰かがナルトに触れる必要があるのよ?ないじゃない。仮にゴミがついていたとして。それなら俺が取ってあげるし、喋るなら俺と喋れば良いだけの事じゃない」
「…」
「お前はそうじゃないの?何で紅達見て何とも思わないの」
「…お前…」
可笑しいよ。
そんなの本当に紅が好きだって言えるの?
「俺は堪えられないね。俺が居るのに目の前でナルトが誰かと喋っているなんて。それが楽しそうなら尚更。想像しただけでもどうにかなりそうだよ。だからナルトには俺以外と喋らせないの」
「…!」
言えば、今度はギョッとした顔を浮かべる。何なのよ。
お前が百面相したって全然面白くない。
これがナルトならなぁ。可愛くて可愛くて見ていて飽きないのに。
一人でそんなナルトを想像していると。アスマがぎこちなく話を進め出した。
「…喋らせないって…そりゃ無理だ」
「無理じゃないよ」
「…、」
「何その目」
俺を異常者みたいに見るアスマ。
そんな目で見られる覚えはないんだけど。
逆にお前の方が異常なんじゃないの、と視線を返すとアスマは徐に口を開いた。
「…、任務とかどうしてんだよ…?」
「任務?」
「…サクラとか一緒だろ…。他にも依頼人と話したりすんだろ…?」
ああ。それは大丈夫。
俺は笑みを浮かべて返す。
「全部俺が受け答えするし。サクラ達は何も言わないよ?そう言えば最近ナルトに話掛けないねぇ。良い事だけど」
微笑みながら言ったら、アスマの身体が強張った気がした。
意味解んない。
本当にさっきから何なの。変な顔したかと思えば質問ばっかしてくるし。
答えれば固まるし。
アスマってこんな変な奴だったっけ?
まあ良いけど。
そんな事より。
俺はもう一つ不思議で仕方ない事があるんだ。
「あのさ。サクラ達がさ、ナルトに話し掛けないのは良いんだけどさぁ」
「…、」
「何か最近ナルトが笑わなくなった気がするのよね」
何でだろう。
前はカカシ先生カカシ先生、って飛び付いて来たのに。
最近はめっきり。
俺から行かないとナルトは来てくれないんだよね。
何でだと思う?
そうアスマに尋ねれば。
「……さあ…、」
「…」
さあって何よ。
同僚のお前に相談した俺がバカでしたよ。
だったら仕方ない。紅にでも聞いてみるかと首を捻れば。
「…」
何故か待機所に居た上忍達が皆俺を見ていた。
それも、唖然と言うか漠然と言うか、とにかくアスマみたいな変な顔で。
異常者を見るような目だ。
「何よ?」
何か気分悪くて、不機嫌そのもので聞けば、全員俺から目を逸らした。
そそくさと部屋を出る奴や、無理に会話を再開する奴。
何なの一体。
頭にくる。
「意味解んない」
妙な苛立ちに舌打ちして、時計を見上げればもう結構遅い時間。
もう寝ちゃったかな。
ナルトに会いたいな。
ナルトの話をしてたから余計会いたくなった。
きっと俺が居なくて寂しがってる。
「ナルト…」
この時間なら任務も来ないだろう。
それにこんだけ上忍が居るんだ。
何か有っても一人減ったくらいじゃどうって事ないだろう。
「俺帰るわ」
腰を上げて独り言の様に呟けば。
「……おう」
アスマが小さく頷いた。
俺はじゃあねと言って早々と足を進める。
その時、
「…カカシさんって束縛すげぇんだな…」
「しかもあれ無意識なのか…?うずまきも可哀想だよな…」
「…ちょっと異常よね…」
背後でぼそぼそと小さい声が聞こえた。
無意識?
ナルトが可哀想?
異常?それ俺の事言ってんの?
何言ってんのコイツ等。
全然意味解んない。
俺にしたらお前等の方が異常だよ。
恋人をほったらかすアスマも、
俺を異常だと言う奴等も。
皆頭可笑しいんじゃないの?
俺は至って普通じゃない。
異常なのは、お前等でしょ。
背中に俺を否定する様な視線を感じたが構わず部屋を後にした。
俺の事はナルトが解ってくれればそれで良い。
俺は異常なんかじゃない。
そうでしょ?
ねぇナルト。
END
アンケートのリクエストで頂いた「自分で病んでる事に気が付いてない先生」を書かせて頂きました。
これはヤンデレになるのか…(汗)どちらかと言うと独占欲が強いという感じですかね^^;
だいぶリク外れになってしまって申し訳ないです(涙)
素敵なリクエスト、そしてアンケートのご協力ありがとうございました。
2010.8.9