カカナル

□勝手な大人・過去編
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任務が終わって、一楽へ直行しようと駆け出した矢先。

「ナルト」

先生に呼び止められた。

「何だっ、て…」

途中で言葉が続かなかったのは、先生の片方しか出ていない目に怒気を感じたから。

見た事もない、冷たい目。

「…、」

思わず足が鋤くんだ。

「ちょっと来なさい」

有無を言わさないその命令染みた口調に、俺は黙って後をついて行くしかなかった。





着いたのは、先生の家。

玄関を開けるなり、入って、と半ば押し込まれる様に背を押された。

俺に続き、先生も部屋に上がると、額宛を外し、上着を脱いでその辺に投げ捨てた。

それからマスクを下げ、次々と服を脱ぎ捨て、最後には素っ裸になった。

余りの驚きに目を丸くしていると、先生は、お前も脱ぎなさいと一言。

「へ」

わけが解らず、ただ立ち尽くす。
動こうとしない俺に痺れを切らしたのか、先生は俺の服を脱がしに掛かった。

「え、ちょっと!カカシ先生っ?」

何をしてくれてんだ一体。

抵抗する間もなく、あれよあれよと剥がされ、遂に俺も先生と同じく素っ裸になってしまった。

「な、何すんだってばよっ!」

「風呂」

怒る俺に、先生は気にした風もなく、今度は腕を引っ張られて風呂場に連れていかれた。




そこからはもうホント最悪だった。

「痛いってばっ!」

そう言ってんのに止めてくれなくて。

先生が何に怒ってんのか解らないし、おまけに訳の解んない事、ずっと言ってるし。

洗わなきゃ、洗わなきゃって。

その繰り返し。

頭をがしがし何度も何度も洗われて。

頭皮から血が出て、白い泡が赤く滲んでた。

痛い、痛いって泣いても止めてくれなくて。

結局、先生の気が済むまでやられた。

先生いわく、消毒を。





「…頭痛い…」

「ゴメンね。でも坊主にするの嫌でしょ?俺も嫌だよ、ナルトの坊主」

風呂を出た後の先生の言葉に眉を寄せる。

「…何だよ、それ…」

頭を押さえて睨み付ける。
ヒリヒリしてすんげぇ痛い。

けど、先生は悪びれた様子もなく。

「イルカさんが俺の、ナルトの頭に触ったからでしょ?」

「…は?」

ちょっと待ってくれ。まさか、そんな理由で長時間痛い思いをしたのか、俺は。

大体何だよ、触ったからでしょって…。

イルカ先生は、火影から頼まれた物をカカシ先生に届けに来ただけで。

そん時たまたま近くに居た俺の頭をぽんぽんって撫でただけだ。
俺だけじゃない、サクラちゃん達の頭だって撫でてた。

会えばいつもしてくれる。
ただそれだけじゃん。
先生もあの時笑ってたじゃんか。

それが何で…。

「誰だろうが許せないのよね、俺のナルトに気安く触るの」

「…俺の、って…」

「だってお前は俺のでしょ?俺…アイツがナルトに触れた瞬間殺してやろうかと思ったよ」

「…!?」

「でもしなかった。一応サクラ達居たしね」

偉いでしょ?
褒めて。とばかりに笑みを向ける先生。

俺は絶句した。

サクラちゃん達居なかったらどうしてたんだよ…。
そう思ったら背筋が震えた。


「今日は洗うだけで済ましたけどね。ホントは切ろうかと思ったの。でもそしたらナルトの綺麗な金髪見れないからね、先生それは嫌だなって」

「…、」

「ああ、シャンプーの匂いじゃなくて血の臭いがするね」

くんくんと近付いて俺の髪に鼻を埋める先生。

「でもナルトの血の臭いなら好きだな。だってシャンプーより甘い香りがする」

そんな訳ない。

ないのに、先生はうっとりした様に良い香りと呟く。

「ね、ナルト。俺嫉妬深いから。今日は許すけど次はないよ?相手もお前も。酷い目にあいたくなかったら触らせないで。ね?」

顔を覗き込まれ、ぎこちなく視線を合わせたら、先生がさっきみたく冷たい目をして、
その目で笑っていたから。

俺は怖くて、震えながら頷いた。


END


2010.7.5
 

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