カカナル
□続・勝手な大人
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「ナルトが子供産めたら良いのにね」
「…」
突然何を言い出すのかと思えば。
ホントに何を言ってんだ。
「そしたらナルトは母親で、俺は父親になるんだ」
「…」
「俺達の子なら凄く可愛いだろうねぇ」
「…」
そんなキラキラした目で俺の腹を見られても、この腹がでかくなる事はねぇよ。
「俺とナルトの証が出来るんだよ、良いなぁ」
「…」
ああ、そうか。
カカシ先生はそれが欲しいのか。
そうだよな、俺にいくら印を刻んだって、それは所詮消えちまう。
キスマークを付けられればすぐ消えるし、殴られたって、骨を折られたって数日で完治しちまう(まあ、治る前にまた折られるけど)。
けど、子供が出来ればそれは立派な証になる。
でもそりゃいくら何でも無理ってもんだ。
だって俺は男だし。
術で女になる事は出来ても、元が男じゃどうにもならない。
そんな当たり前の事を思っていたら、先生が何かぶつぶつ呟いている事に気付いた。
「先生?」
「…ダメだ」
「は?」
「ダメ」
「…」
え。なに、まさか本気で言ってたのか?
「ダメだよ」
そりゃダメだよ。
常識で考えりゃ当然…
「やっぱり子供出来ちゃダメだ」
「…は?」
常識の話じゃないのか?
先生の顔を覗き込めば、凄く真面目な顔をしていて。
「子供出来たら俺、きっと大変な事する」
「…?」
言ってる事が理解出来ない。
大変な事って何だ?
「ナルトがとられちゃう」
「…」
んん?
先生、全然解んねぇんだけど。
「子供出来たら、ナルトがとられちゃう。俺のなのに。ナルトは俺のなのに。…いくら自分の子でもそんなの許せない」
「…」
「ナルトを見て良いのは俺だけ。触れて良いのも、話して良いのも、俺だけ」
…ああ、なるほど。
「お前の全部が俺のなの、ぜんぶ全部俺の。俺以外が触れるなんてダメなんだ」
解った。
先生が何を言いたいのか。
でもその先は聞きたくない。
「だから俺、子供出来たらその子の事…」
「俺は先生と二人が良いってば」
「―!」
聞きたくないから遮った。
「俺は先生と二人が良い。子供なんかいらない。先生と二人が良い」
「ナルトっ」
言えば、先生は嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ナルト、先生嬉しい。そうだよね、子供なんかいらないよ。俺達はずっと二人で良いんだもん」
「…うん」
「他の奴が入る隙なんてないんだ。ナルトを愛して良いのは俺だけだもん。ね、ナルト」
「…そうだね」
初めからこの人に常識もクソもありゃしねぇんだ。
あったって、この人にそんなもんは通用しねぇ。
そして
『ナルトがとられちゃう』
そう言って、自分の子供に嫉妬する先生が、少し可愛いなんて思ってしまった俺も、
常識なんてもんは、きっと持ち合わせていないんだろう、な。
END
2010.6.27