カカナル

□歪んだ愛
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「俺を裏切らないでね」

付き合う事になった時、先生はそう言った。

両想いって事が嬉しくて浮かれていた俺はその意味も解らずただうんうんと頷いた。

その意味が解った時にはもう――…



-歪んだ愛-



「ナルト。一緒に住もうよ」

「またその話だってば?」

もう耳にタコが出来るんじゃないかってくらい聞いてる気がする。

まあそれはその度に俺が断ってるからであって。
だってさ、付き合い始めてまだ3日だってばよ?

嫌な訳じゃない。

けどちょっと早くない?って思うわけ。

一緒に居たいって気持ちは多分先生と同じくらい大きいと思う。

でも恥ずかしいし。
先生を意識してから空回りしてばっかの俺が今先生と住む事になったら多分心臓爆発して死ぬ。

それくらい緊張してるし、恥ずかしいんだよ。

毎回そう言って断って、今ので何回目だろ、なんて思いながらまた同じ事を言おうとしたら。

先生は笑顔で

「じゃあ日向の目ん玉くり抜くね」

そんな事を言って退けた。
笑顔で、だ。

いつもはけちーって言って、いじけるのに。

今日の先生は違った。

「…へ」


聞き間違いかと、俺の口からは何ともまぬけな声が出る。

カカシ先生が、そんな事言うなんて。

今まで聞いた事がないし、見た事がない。

わけが解らず視線だけで先生に問いかけると、先生はくすりと笑って俺を引き寄せ胸に抱いた。

「だってね?俺、ナルトの事が好きだから、いつ何処で何してるのか知りたいの。特に生活風景とか。だから一緒に住もうって言ったんだけど…」

お前がダメだって言うからね。
そう耳元で囁かれる。

「それでも一緒に居たい俺はじゃあどうしたら良いかなって考えたら。日向の目ん玉くり抜けば良いんだって思ったのよ」

―意味が解んない。

先生の言ってる事も、俺の身体が震えてる事も。

「俺はお前の全てが知りたいの。解んない?」

「…、」

聞かれても何も答えられない。
答えられたとしてもそれはきっと声にならない。

解りたくない。

「どうしたの?震えてる、可愛いナルト」

ちゅ、とこめかみにキスをされた。
いつもなら恥ずかしくて、赤面してあたふたしてしまうけど今はそれどころじゃなかった。

「ナルトと一緒に住めないならね、日向の目を貰おうかなって。人の目なんか嫌だけど、でも白眼ならいつでもナルトを見てられるでしょ?」

何でとか、どうしてとか、もう頭の中がごちゃごちゃでわけが解んない。

頭上で話す先生がどんな顔して言ってんのか知らないけど、―知りたくねぇけど、これだけは解った。


―この人マジだ、って。

普通じゃない、って。

「離れていてもナルトの姿が見えるって凄いよね。先生嬉しくてどうにかなっちゃいそう」

「…、」

どうにかなっちゃいそうなのは俺の方だ。

今の今まで好きだった先生が、

先生が、怖い…。

「まあ俺とナルトが離れるなんて事あり得ないけどね。でもナルト、俺と住むの嫌なんだよね?恥ずかしいんだもんね?仕方ないからナルトが良いって言うまで白眼で我慢するね」

ホントは近くにいたいけど、それが出来ないから遠くで見るしかないよね。
俺って健気ー。

くすくす笑いながら言った後、じゃあ早速行って来るね、と離れていく先生の腕を咄嗟に掴んだ。

「ナルト?」

「…、」

「どうしたの?すぐ帰って来るよ?引っこ抜いて医療班に移植してもらって、すぐだよ?」

どうして、どうしてそんな事が言えるんだ。

何で笑ってるんだよ。

「ナルト?」

先生を見上げれば、冗談で言ってる感じは一切窺えない。

いつも見る笑顔。

なのに、全く違うものに見えるその表情に俺は、初めて本気で恐怖を覚えた。



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