M-3

□へし折ってしまおうか
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バタバタと城の中を歩き回るが
佐助の姿は見当たらない、
腕の調子もいいみたいだったから少し頼み事があったのだが…


「幸村、どうしたのだ」
「親方様!いえ、佐助を探しておりまして」
「佐助を?幸村の側を離れるとは珍しい」
「はい…最近様子も変ですし」
「それはまことか…」


ぴくりと、信玄の眉が動く


「幸村っ」
「はい!」
「今日梓の姿を見たか?」
「いえ、見かけておりませんが」


いつかは動くと思っていたが
まさか当日になって動くとは…
嫌な予感が当たらなければ良いのだが


「幸村、早く佐助と梓を探せ。祝言はその後だ」











どうしていいのか分からない

私は何をしなければならないのか
何をしたいのか、分からないよ

佐助が好き
でも諦めた
でも、佐助は私のことを好きだと言った
一度持った決心なんて、崩れてしまったら復元なんてできるものじゃない


「…」


自分の足を抱き締めて、ぎゅっと小さくうずくまる
周りには誰も居ない
静かな川のほとり
城から少し時間がかかるから見つかることはまずないだろう

川の音が、耳に心地良い
この水のように全てを洗い流せたならどんなに幸せだろう
そしたら佐助とも、何の障害もなく想い合えたのかな


ぽつん


涙が零れた
ぽつぽつと、服の色を変えて
涙はとめどなく溢れてくる

とまらない
とまらないよ
自分の無力さが悔しい
彼を傷つけていた
馬鹿な自分に腹がたつ


「祝いの日に、主役が居なくてどうするんですか」


頭上から声が落ちてくる
上を見上げても彼は姿を見せてはくれない


「泣き止んで、早く城に帰ってください。姫様」


私が城に帰れば、幸村と正式に結婚することになり
本当に後戻りはできなくなる

帰れない
帰らない

絶対に


「佐助は…まだ、私のこと好き?」
「いいえ、そのようなこと思ったことは一度も」
「本当に?じゃあ昨日言ってくれたのは、何」
「忘れましたよ。そんなこと」


あぁ、いつまでも涙がとまらない
声がしゃくりあげることもなく
ぽろぽろと、静かに涙が落ちていく


「そう…じゃあ私、死んじゃおうかな」
「…」
「貴方のこと諦めたつもりだったけど、やっぱり無理みたい
幸村のことが嫌いなわけじゃない…でも
本当に愛している人の隣に居て、ずっと…
心臓を裂かれるような痛みっ…たえられ…ない……」


また、黙ってしまうのね
それは当たり前
だって自分のせいで主人の妻になるはずだった人間が死んでしまったら大変だもの
でも、最後の私の迷惑ぐらい
かぶってよ


「…」
「…佐助、命令よ」


再び
上を見上げると、貴方の姿が見えた




「私を殺しなさい」









その細い首を
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(左を選ぶ?)













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