遊☆戯☆王 デュエルチャンピオンズ

□第八話 別れを決めるデュエル
上津遊 霧VS椚 直輝
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「あら、美帆」

「あ、お姉ちゃんにつね先輩」

「狐、ですよ」

帰宅途中、直生と美帆はいつもは見せない仲良く腕組みしている姿の狐と明美とバッタリと会ってしまった。

「椚くん、こんばんわ」

「どうも・・・」

出会って直前、直輝は繋いだ手を離そうとしたが美帆は離さなかった。

「約束忘れないでよ」

「俺は逃げない」

「それが本当なら僕の目、見て」

「・・・」

直輝は逸らした、視線も顔も。

「・・・椚君には美帆は似つかわしくないわ」

「いきなりなんですか、俺たち付き合ってねぇんだが」

「でも、気がある・・・違う?」

「・・・」

直輝の顔に汗が出てきて、目をキョロキョロさせる。

「図星、ね」

「すまん、美帆さん」

「え?」

直輝は一言そう言うと、美帆を抱き締めた。

「美帆さんは俺のパートナーだ、だから、離さないし誰にも渡さん」

「今さっき、手を離そうとしたよね?」

美帆の目が直輝を下から見つめる。

「いや、あれは、繋ぎ直そうとしただけで」

「・・・まぁ、そういうことにしておく」

「ありがとうございます」

直輝は抱きしめてた手を離した。

「あ、でも、タッグとしての相性はバッチリでしたよね、明美さん」

「つねつね、私はそんな当たり前のことより、この子が隠し事してるのが気にくわないの」

「っ!」

「隠し事、ですか?」

「つねつね、私と美帆は大手製薬会社の社長の娘って前説明したわよね」

「ええ、野球チームも経営している大きな会社ですよね」

「・・・」

「彼も大手企業、私達より上のランクの跡取り息子なの」

「・・・」

直輝は沈黙。

「ね?・・・直輝くん」

明美が言った直輝の秘密はその場にいる者しか聞き取れない程独り言のような小さな声であった。

「なっ、それって」

「そう、あの会社の御曹司よ」

「なんで、知ってんだよ」

「あなたのお父さんは私のお父さんの友達だから、記念写真見せてもらって説明されたわ
写真写りは最悪だったわね」

「・・・はぁ〜だから、写真は嫌だったんだよ
ってか、よく覚えていたな」

「・・・」

「その苗字の人を忘れる方が難しいわよ」

「ん、で、だからなんだよ」

「あなた、自分に誇りがないんでしょ
名家に生まれて沢山のプレッシャー、期待
それに、次期社長としての教育やマナーにしきたり」

「・・・」

「同世代の友達もいなく、孤独の日々」

「黙れ」

「上級生には奇異の目で見られ、教師には相手にされず」

「黙れ」

「唯一頼れて信頼できるのは二人の姉、そして、椚の性を受けてここにいる」

「お姉ちゃん、もう、やめて」

「少しやり過ぎですよ」

直輝は俯き呼吸を荒げている。

「いいのよ、人生の敗北者にはこれぐらいしないと

行きましょう、つねつね」

「あ、は、はい」

明美は狐とその場を去って行った。

「俺は、かっぁはぁはぁ、俺はぁ」

「直輝く、ん?」

「美帆さん、すまん、一人で帰れるか?

俺、ダメだわ・・・」

「約束したのに、破りたくない」

「なら、頼んでいいか?」

「ん?」

「俺の顔を見ないでくれ」

「・・・うん、わかった」

美帆は黙って直輝の頭を撫でた。

「お姉ちゃん、少し言い過ぎてたよね
見返そう・・・」

「あぁ、見返そう

絶対に・・・」

直輝は抱きつこうとしたが、駄目と言われ諦めた。
けど、二人は少し笑った。
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