遊☆戯☆王 デュエルチャンピオンズ

□第十話 美しい華は海辺に咲く
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授業終わりのチャイムが鳴り響き、生徒達が教室から大軍のように出て行き、ダッシュである場所に向かっていく。
それは、昼食のドローパン争奪戦だからだ。

その毎日行われてるイベントに関係ない教室にいる自炊勢(他称)や朝に昼食を買っている人の中に水野 美帆がいた。

「美帆ー、これからお昼どう?」

美帆と仲の良い二人の女子、声をかけたのは茶髪のやや長めの髪をツインテールで結いてる女子、その隣にいるのが金髪で美帆とだいたい同じくらいの短さの女子。
茶髪ツインテールは神崎 奈々(かんざき なな)、金髪短髪は秦先 アリサ(はたせん ありさ)。
どちらも美帆と同じ水泳部で一年だ。

「僕はえっと、直輝くんと食べるかなー」

「またー?たまにはいいでしょ」

「え、でも、直輝くん一人にするのは可哀想かな・・・って
それに、僕の分の昼持ってるの直輝くんだし」

「あんな変態放っておこうヨー」

アリサは少し日本語訛りがある模様。

「あはは、ごめん
でもなんか、放っておけないんだよね」

「許嫁だかなんだか知らないけど、あの変態気が多過ぎるヨ」

「この間なんて水泳部の見学とか言ってビデオカメラ持ち込んでたからね
壊したけど」

二人は直輝に対して怒りを露わにする。

「でも直輝くんって、変態な行動多いけど」

「「けど?」」

「僕のこと本当に大好きなんだよね、あの見学の時も転びそうになった僕を助けてくれたし、それに僕と二人きりでいる時は他に目移りしないし」

嬉しそうに彼女は直輝の良いところを語る、その理由は直輝が好きだからではなく「直輝は変態だけど、美帆以外興味ない」と伝えたいだけである。
だが、話してる内容はまんま・・・

「ねぇ、アリサ・・・これ惚気だよね?」

「そう聞こえるヨネ」

「あ、僕は直輝くんのこと好きでも嫌いでもないからね、ただ一緒にいて楽しいだけで」

「惚気だ」

「惚気ダネ」

「ちがー「あの」

美帆が否定しようとした時、男の声がし彼女の否定を遮る。

「き、君は・・・!?」

奈々が声の主を見ると驚く、長身でイギリス系のイケメン顔、少し長めの金髪。

「え?誰?」

「美帆知らないんダ」

「彼は一年でもうサッカー部レギュラー、実力はプロ並み!そして、振った女は数知れず、安西 カーターくん」

「いえいえ、そんなことはないですよ・・・」

「で、その安西くんは僕たちに何の用なの?」

美帆はまるでさっきまでの活き活きさがなくなり、今の話題に興味なさそうに言う。

「僕がお話あるのは水野 美帆さん貴女です」

「ん?僕に?何の用なの?」

「ここでは何ですし、廊下でお話ししましょう」

「えー、でもこれからお昼だし」

「いいじゃん、美帆待ってるから」

「いってらっシャイー」

「あ、う、うん」

と、美帆は二人に言われカーターと廊下に出る。

「で、用って?」

「あの、用ってことでもないんだけどね」

「それなら、戻っていい?」

「直ぐ終わりますから!」

「あ、うん」

「えっと、水野さん・・・ぼ、僕と付き合って」

「ごめん、そういうのパス」

「なんでですか!?少なくても海馬よりは」

「いや、直輝くんとはただの許嫁なだけだからね、彼氏でもないんだよね」

「そ、それなら、僕だって」

「だーかーら!僕は男とカップルになりたくないの!」

「そ、それなら」

ガンと、美帆はカーターに壁に追いやられる。

「そ、それなら、僕と」

「っ!?」

美帆は見開くこの状況を、過去の背景に載せて。

「僕と『いいじゃないかよ、美帆』

「ひっ!?」

美帆は恐怖から自らを強く抱きしめ震える。

「み、水野さ『な?良いだろ? キスぐらい』

美帆に見えてるカーターは別のモノにすり替わっている、長身で狡猾な笑みを浮かべてる男の姿に。

「や、やめて!」

「大丈『なんで、嫌がるんだよ、美帆』

幻想の男が手を挙げ美帆を叩こうとする。

「誰か助けて」

「どうし『お前は黙って俺の言うこと聞けば良いんだよ!』

幻想の男が手を振り下げた時、美帆とカーターの間に別な男が遮り美帆を抱きしめる。

「大丈夫ですか?美帆さん?」

「な、直輝く・・・ん?」

「か、海馬なんで急に!?」

美帆の目からは涙が溢れんばかりにこぼれ落ちる。

「そんなことはどうでもいい、お前美帆さんと付き合いたいとか言ってたな」

「そ、それがどうしたんだよ」

「美帆さんを怖がらせてる奴に美帆さんと付き合う権利はない、失せろ」

「権利って、君にどうこう言う権利もないだろ!」

「ある、俺は美帆さんを幸せにできない奴を一回ぶん殴ったからな」

直輝は美帆を抱きしめながらカーターに怒りの目をぶつける。

「お前なら、そいつを殴れたか?
どんな問題が起きようと、例え自分が悪になろうと、自分が死のうと・・・それが、できるならさっきの発言は取り消す」

「え、そ、それは」

困惑するカーター。
こんな問いを仕掛けられたら誰だって答えを迷い渋る。

「即答できないなら、美帆さんに近寄るんじゃない
美帆さんは、俺が守る・・・」

しっかりと直輝は美帆を抱き寄せる。

「うっ、は、はい」

カーターは力の無い返事をしトボトボと歩いて行く。

「うっ、ひぐっ、うっうっ」

美帆は子供が痛みで涙を流すのを我慢するかのごとく目尻に涙を浮かべ声を漏らしていた。

「泣きたいほど怖いなら俺のところに来い、不安なら俺を呼べ、嫌な思いしたら俺を頼れ、嫌なこと思い出したら俺がいる
何かから逃げることは悪いことでも恥ずかしいことでもないんだ」

「う、うん・・・ひっぐ」

直輝は美帆の背中を子供をあやすかのように撫でる。無言で何も言わずに。

「・・・かっくいぃ」

告白現場から今の状況になるまでの始終を見ていた奈々は呟く。

「変態のクセに・・・」

アリサも続けて呟く。
それから、数分の時が過ぎる。

「直輝くん、もう良いよ」

「え?もうちょっとだけ密着してようよ、いや、このままずっと」

「周りに人いるんだしバカなことは言わないの」

「俺が美帆さんをどれだけ好きかわかってもらえるためなんだから」

「意味がわからない」

「ええっ!?」

「ふふ、なんで驚くの、おかしい」

美帆は小さく笑った。

「そりゃ、なんというかかんというかですね」

「なんで説明できないのよ」

美帆は笑う。
その二人を見て、奈々とアリサはなんで美帆が直輝と一緒にいる理由が少しだけわかった気がした。

「美帆のあの笑顔」

「うん、私見たノ初めテ」

「もしかして、美帆はわかってるのにわかってないフリしてるんじゃ?」

「奈々・・・それ、どういうコト?」

「そうだね・・・美帆は多分、自分の気持ちを出すのが怖いと思うの」

「私そういうノ少しダケ鈍感、わからない
だケド、今の美帆はサイコーに楽しそう」

「そうね・・・海馬が楽しそうにしてるの癪だし邪魔するか」

「そうネ」

二人は向かい合い頷くと一緒に廊下に出た。

「海馬、いい加減美帆から離れなさい」

「・・・はーい、美帆さんも落ち着いてるようだしな」

直輝はあっさりと美帆から手を離す。

「改めて・・・ありがと、直輝くん」

美帆の笑顔からの感謝を直輝は無言で受け取ると顔を赤くしそっぽを向く。

「へぇ、成る程・・・海馬くん
一緒にお昼食べない?」

「正気か!?女の敵の俺を!?」

「なんで自覚してるネ」

「俺が女子たちに嫌われてるのは百どころか億、兆も承知だからな」

「そうしてるのワザとなんでしょ?」

「んー、どうだろうなぁ」

奈々の質問に直輝は曖昧で適当な返事をする。

「そういう変態行動してれば貴方に近づく女はいなくなって、美帆に有らぬ疑いが」

「それがわかったからなんだ?
そんなブルーでブラックな内容してたら色んなこと思い出して飯が不味くなる」

直輝は1人で歩き始める。

「行こう美帆さん」

「あ、うん、ごめんね二人とも」

美帆は手を合わせ二人に謝罪すると直輝の横に着いて歩く。

「あーあ、怒らせちゃたネ」

「え、え?」
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