遊☆戯☆王 デュエルチャンピオンズ

□第一話 始まり
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「上津遊、起きろ
そろそろ行かないと怒られるぞ」

DAに入学早々上津遊霧は授業放棄をし布団にくるまっている。
そんな彼に手を焼いているのは、彼のルームメイトである坂本風緑・・・属性を扱う者達(エレメントマスターズ)の一人である。

『霧、篭ってると体がなまるよ
だから、私とぉいいことしよ?』

半透明で焦げ茶色のローブを身に付けふわふわと浮いている齢20程度の淫靡な女性、彼女の名は死再生美こと再死・・・デュエルモンスターズの精霊だ。
デュエルモンスターズの精霊は特定の者にしか見えず実体を持たない。

『風緑、遅れるわよ』

「そうだな、俺のウィン」

風緑の隣には半透明のポニテの少女、憑依装着特有の服を着ている憑依装着-ウィンだ。
彼女もまたデュエルモンスターズの精霊だ。

『煩いわよ』

「キスしたらだまふ」

ウィンは実体化し風緑を杖で殴る。
精霊は時に実体化する場合がある、それはその精霊の意思に対して実体化する場合がある。

「もう、照れ屋なんだから」

「バカ!」

ウィンは回し蹴りを風緑を浴びせ風緑はそのまま片膝をつく。

「ぐふ、今日は白だな」

ニヤリと笑う風緑。

「・・・」

『・・・』

呆れ顔になる二人。
ウィンは風緑の顔を180度曲げた。

「痛い!死ぬ!これ死ぬ!」

ウィンはすぐ手を離し精霊に戻る。

「俺じゃなかったら死んでたぞ・・・」

こきこきと首を鳴らし立ち上がる。

「・・・全く、騒がしいな」

布団の中から声がする、これが今作の主人公の第一声。

「よく言われる
で、どうすんだ?学校は?」

「・・・」

「無視かよ」

やれやれだ、と風緑は溜息を吐き制服の裾に手を通す。
何十年経っても今でも変わらないデザインのオシリス・レッドの制服。

「俺は行くからな、上津遊」

『いってきまーす』

『いってらっしゃ〜い』

二人を見送る再死、霧は反応しない。

「・・・行ったか?」

『はい、私の旦那様』

「誰が誰の旦那だ?」

霧はゆっくりと起き上がり無造作に伸びた髪を掻く。

『霧が私のダ・ン・ナ』

「・・・すまん、体調悪くなった、寝る」

『わかった』

再死は服を脱ごうとする。

「・・・脱ごうとするな」

『てへ』

「てへ、じゃない」

こんなやり取りは三年ぐらい昔から行われてた二人だけのやり取り。

そして、彼・・・上津遊 霧は眠りについた。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

それから、数時間が経ち。

『霧!霧!』

「・・・」

『霧、起きてよ』

「なんだよ、眠いのによ・・・」

霧は起き上がり寝ぼけ眼を擦る。

『外が騒がしいんだよ』

「他のレッド生が帰ってきたんだろ?」

『いや、それがさ、ブルーの寮長が来てるんだよ』

「・・・?寮長?」

「あー、あー、マイテスマイテス」

スピーカーか、それに類する何かを使い気の抜けた声が聞こえる。

「上津遊霧くん、至急寮から出て来てくださーい」

「・・・」

『どうする?霧?』

「寝る」

「起きないとー強硬手段に入りますよー?」

「・・・あー、めんどくさい」

よっこらせ、と彼はそう起き上がり制服を着てその上から黒緑のコートを羽織る。

「・・・眩しいな」

久しぶりに日を浴びた上津遊は目を細め、少しぱちくりさせる。

時は昼、周りには十数の生徒・・・レッドやイエローはいるが、ブルーの生徒は見えない模様。
そこには極めて目立つ白衣でぐるぐる眼鏡を着けメガホンを手に持つ男・・・青雲 龍之介、ブルーの寮長だ。

「あー、やっと出てきてくれましたか、上津遊 霧くん」

にこりと龍之介は霧に言う。

「あんた、誰?」

「ブルーの寮長の青雲龍之介です
入学式の時挨拶しましたが」

「憶えてない
で、何用?」

あっさりと彼は答える。

「そろそろ授業に出てください」

「嫌だ」

返答僅か3秒。

「実力行使に出ますよ」

「どうぞ、勝手にしてくれ
俺は眠い・・・」

霧はふぁぁと大きなあくびをして、部屋に戻ろうとする。

「・・・このままじゃ、退学ですよ?」

その言葉に霧の動きが止まる。

「た、退学?」

「えぇ、出席日数と授業成績・・・それが足りてなく退学
いくらデュエルが強いとしてもです」

「・・・それだけは、嫌だな」

霧は動きをやめ振り向く。

『行くの?学校?』

「そうだけど」

誰にもばれない声で小声で再死に返す。

コツコツと音をたて階段を降りて行く。

「で、先生・・・生徒がいるのは?」

適当に浮かんだ疑問を相手にぶつける。

「それは、貴方を見にですよ」

キラリと眼鏡を輝かせ彼は言う。

「俺?」

「はい、ジュニア大会を総ナメにし中学では全国大会優勝、中学生で日本代表になり世界大会優勝に貢献した貴方を見に」

「・・・あー、そうえばそんなことあったけな」

ぽりぽりと頭を掻き興味なさそうに霧は答える。

「特別待遇生徒なのにレッド寮を選んだのは何故なんです?」

「そんなの、どうでもいいだろ」

「そうですか・・・ちゃんと授業には出てくださいよ」

龍之介はそれを伝えると踵を返し戻る。

「・・・背筋伸ばすの疲れた、痛い」

龍之介が戻るのを確認し、霧は階段の段差に腰を下ろし天を仰ぐ。

「ずっと篭ってるからだろうが」

「・・・風緑か」

その隣に風緑が座る。

「俺の経歴知ってたか?」

「あぁ、知ってた」

缶コーヒーを片手に風緑は答える。

『風緑、またコーヒー飲んで
また眠れなくなったらどうするのよ』

「え、ウィンと楽しい楽しい大人な遊びを・・・」

ポッと顔を赤らめる風緑、それに三人はその顔に対し呆れ顔で返す。

「・・・相変わらずバカみたいな奴だな」

「ん?なんのことだ?」

風緑は缶コーヒーをぐびぐびと飲む。

「無自覚が罪ってあるんだな」

「だから、なんのことだよ」

「(お前のことだ)」
『(君のことだよ)』
『(風緑のことだよ)』

各々言葉に出さず心中で突っ込む。

「そうえば上津遊は、昼飯食わないのか?」

「・・・そういうお前は?」

「食うよ、ウィンの愛妻弁当を」

『愛妻弁当じゃないわ!ただ、お腹空かせて可哀想だと思って作っただけだから!』

「うん、わかってるわかってる
だから、俺の好きな食べ物と栄養バランス考えてんだよね」

にっこりと微笑ましく笑う風緑。

『霧も私の愛妻弁当食べたい?』

「要らない」

スパッと霧は返答する。

「ドローパンにするわ」

霧は立ち上がりテクテクと歩く。
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