*novel*
□君の香りに嫉妬して
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窓の外はすっかり暗くなり僕等の時間が来る。
空は月も星すらも見えない曇り空で、まるで僕の心情を現しているようだ。
そんな曇天のような気持ちになるのはさっきの優姫のことばかり考えてしまうせい。
何故あんな香りがしたのかわからないが、理由をあれこれ考えてみても辿り着くのは零絡みのことばかりで、静かに怒りのような感情が募るのを感じる。
それでも表情は冷静を装ったが、授業の時間がとてつもなく遅く感じた。
珍しく時計の針が早く進まないかと思った程だ。
「優姫。待たせたね」
授業が終わり廊下に出ると、僕が教室から出て来たのに気付いた優姫が涙目で慌てて姿勢をただしお辞儀をしてきた。
きっと欠伸でもしていたのだろう。
こんな時間まで待たせてしまった事を申し訳ないと思う一方、一刻も早く彼女を彼から引き離したいと思う自分もいる。
本当に僕は、我儘だ。
「センパイ、話って……」
「そうだね。ここじゃ何だから、ついてきてくれるかな?」
「は…はい!!」
僕の後を優姫は遠慮がちについてくる。
横に並んで歩いてはくれないんだね?
そんな優姫の恥じらうような姿を微笑ましく思いながら僕はゆっくり彼女がついてこられる速さで歩いた。
「さぁ、入って」
自分の部屋の扉を開け、戸惑う優姫を中へと招き入れる。
不安気に部屋を見渡す優姫を見つめながら僕は後ろ手で扉を閉めた。
「あの…センパイ……」
「優姫、おいで」
僕はソファーに腰掛け、立ち尽くしたままの優姫にその隣に座るよう促した。
優姫は大人しく遠慮がちに端の方に腰を下ろす。
僕はくすりと笑って優姫の肩を抱き寄せ、その髪を一束手に取り口付けた。
やはり、消えていないあの香り。
頬を紅く染めた優姫を上目遣いに見つめ、有無を言わせないとでも言うように問いただす。
「…いつもと違うね」
「何が…ですか?」
本当にわからないのか、それともわからないふりを通したいのか。
どちらでも構わないが、とにかく優姫が彼と同じ香りを纏っているなんて耐えられない。
今思うのはそれだけで、僕は緊張からなのか体を強ばらせた優姫を引き寄せ自分の腕の中に閉じ込めた。