*novel*
□隣
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「最近…零くんとあまり話さないわね、優姫」
その言葉にドキリとして、思わず手にしていた教科書を落としそうになる。
優姫は全てを見透かしたような目で自分を見つめている親友を恐る恐る見返した。
「頼ちゃん……わかる?」
「わかるもなにも…わかりやすすぎるのよ優姫は」
呆れたようにそう言って沙頼は頬杖をつく。
優姫も呆れられたのがわかって苦笑いを浮かべた。
「まぁ私にはあまり関係のないことだけれど……
いつもの二人が一緒にいないなんて変な感じだわ」
「……私ね、今迄どんなに私が煩くてもお節介でも…零は素直じゃないけどああ見えて優しいから受け入れてくれてるんだと思ってた。
でも……それにもいい加減疲れちゃったんだとしたら…ウンザリしてるなら……私は零から距離を置くべきなんだなって……」
俯きながら思いを紡いでいき言葉を詰まらせた優姫は、自分が重くしてしまった空気を払拭しようとわざと明るく振る舞う。
自分は大丈夫、悪いのは自分だから、と言い聞かせて。
「でも大丈夫!頼ちゃんには迷惑かけないよ!」
「迷惑なんてことはないけど…
優姫、貴方本当に平気なの?」
「もちろん平気だよ!」
腕を大袈裟に振って大丈夫アピールをする優姫だったが、その腕が何かに勢い良く当たってしまい慌てて振り返る。
「ごっ……ごめんなさ………」
振り返った先にいた人物をはっきりと認めて優姫は息を詰まらせた。
時間が止まってしまったかのように感じるくらい、その見慣れた瞳から目を逸らすことができない。
「別に…何ともない……」
そこにいたのは零だった。
優姫が逸らすことが出来なかった零の瞳はどんな色にも染まらず無のままに優姫から逸らされる。
そのまま何事もなかったかのように席に着いた零を、優姫は何か言いたそうにして見つめていた。
「零くん、最近ちゃんと授業出てるわね」
「……そう…だね………」
あれ程授業に出なかった零が、自分が"話さない宣言"をしてからちゃんと授業に出るようになった。
そんな行動も「優姫なんて必要ない」と言われているように感じて、優姫は自分でも気付かないうちに視線を落としていた。
「優姫にこんな顔させるなんて…
零くんになら優姫を任せられると思っていたのだけれど」
「………ははっ
零は悪くないよ。私の…せいだから」
尚も心配そうに見つめてくる親友に、優姫は今自分に出来る精一杯の笑顔をみせた。