*novel*


目覚めはあなたと共に
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「おにいさま……
もう私は、太陽の日差しの眩しさや鳥のさえずりで一日の始まりを迎えることは出来ないんですよね」


どこか淋しそうに呟いた優姫に温もりを与えるかのように、枢は自身の腕の中へ優姫を包み込んだ。


「……淋しい?」


枢は自身の腕にすっかり収まった優姫に問い掛ける。
優姫は枢の鼓動を聞きながら目を閉じてみた。


「……淋しくなんてないです。
おにいさまがいるなら、私、淋しいはずなんてないです」


自分に言い聞かせるように優姫は同じ言葉を繰り返す。
そうすればいずれ枢に見破られるであろう嘘も今は本当になる気がしていた。


「無理しなくていいんだよ。
優姫がまだこの生活に馴れてないのも、淋しいのを隠そうとしてるのもわかってる」


おにいさまはやっぱり何枚も上手だ、と優姫は改めて思い知らされる。
枢に嘘なんて通用するはずがないし、気持ちは全部見透かされている。
自分がこの人の前で無理をすればする程、その分この人により深い孤独を感じさせてしまう。
優姫はそう思い、ゆっくり目を開け枢の背中に腕を回した。


「……おにいさまには適いません。
正直に言うと…確かに少し淋しいです。
私が人間として生きてきた10年間は決して幻ではなかったから……」


優姫は枢の胸に手を置き、切なさを湛えた瞳で枢を見上げた。


「でも、おにいさまがいるなら淋しさも忘れてしまうというのは本当です。
私……おにいさまにはもう孤独を感じてほしくないんです……
だから、貴方が目覚めたときには笑顔で"私はここにいる"ということを教えてあげたくて……
それなのに……」


枢は懸命に自分の気持ちを伝えようとする優姫を愛しく思い、同時に正面からぶつかってきてくれたことを微笑ましくも思った。
優姫の大きな瞳から雫が流れ、透き通った肌に線を残していく。
その線を消すように辿ってから、慰めるように優姫の頬を枢の大きな手が包み込む。


「泣かないで、優姫。
本当に君は優しいね……
僕は優姫が傍にいてくれるだけで幸せなんだよ?
孤独を感じることなんて何一つない」

「おにいさま……」


優姫はすがりつくように枢の胸に顔を埋める。
枢はそんな優姫の頭を優しく撫で、耳元でそっと囁いた。



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