*一周年記念*
□りゆうなんて聞いてあげない
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どうして私はこんなところにいるのだろうか。
そして何故…
今目の前にこの人がいるのだろうか。
混乱するあまり思うように働かない思考で答えを導きだそうとする優姫は自分を落ち着けるように胸に手をあて目を閉じてひとつ大きな深呼吸をする。
優姫は少し頭の中で時間を遡ってみることにした。
*
始まりはほんの数十分前。
授業もなく穏やかな日だったため日頃出来ないことでもしたいなと優姫が思っていた矢先、クラスの女の子に「お願いだから来て!」と半ば強引に連れ出された先は談話室。
そこにいたのは見たことはある気がするが名前なんてとても知らない様な他クラスの男の子達。
その人達に向かい合うように座っていたのは同じクラスの女の子達だった。
何?この状況。
当然そう思った優姫だったが、すぐに状況を把握した。
「ねぇ…これってまさか……」
「うん、合コン!
お願い、いいでしょ?女子が一人足りなくて…」
「いいも何ももう連れてこられちゃってるし…」
そうか、皆合コンとかやるんだ…
でも私一応風紀委員だしこういうのは止めさせた方がいいのかな…
こういうのに参加してるって知ったら理事長も零も何て思うかな…
いや……
それよりも枢センパイは何て思うんだろ…
優姫が友人に手を引かれ有無を言わさず席に着かされるまでの間にそんな考えを巡らせていると、男子が何か優姫に話し掛けようとしたという素晴らし過ぎるタイミングで、扉の方から優姫が今一番聞きたくはなかった声がした。
「こんなところで…何をしているのかな?」
「く…玖蘭先輩!!」
枢を見た瞬間、一斉に沸き上がる女子達の悲鳴にも似た歓声。
優姫が恐る恐る女子達の視線の先を向いてみれば、微笑むでもなく寧ろ無表情の枢とばっちり目が合った。
「か……かな、めセンパイ……」
「優姫……何を、しているの?」
枢の言葉の節々に感じるのは怒りに近いものであると優姫は確信する。
それに怯えて優姫が何も答えられないでいると、女子が遠慮がちに枢に話し掛けた。
「あの……
よろしければご一緒しませんか?」
「……いいの?
それじゃあお言葉に甘えて」
「はい!是非!!」
この子は何を言いだすんだ…
どうして枢センパイも断らないの…!?
心の中で絶叫する優姫の目の前には当たり前のように枢が座ることとなった。
*
……そして今の状況に至る。
自分の目の前に座った枢をまともに見れない優姫だったが、女子が絶えず枢に話し掛けているため何とかこの空気に耐えることができていた。
「あの……先輩はどうしてここへ?」
「ちょっと理事長に用事があってね。
偶然ここを通りかかったら優姫の声がしたから寄ってみたんだ。
それで……優姫は何故ここにいるの?」
「えっ!?」
話が全く頭に入ってきていなかった優姫だったが、自分の名前が急に呼ばれたことに気付き素っ頓狂な声を出してしまった。
何だか気まずくて目は合わせられなくても枢の視線を痛いくらいに感じる優姫。
枢に名指しで呼ばれてしまった事で嫌でも感じる女子達の冷ややかな視線。
おまけに枢においしいところを全部持っていかれてしまった男子達の視線も痛い。
優姫はさすがにいたたまれなくなり勢い良く立ち上がった。
「あのっ……!!
私、用事があるのでこの辺で!!」
失礼しました!
そう言いながらペコリと一礼して慌ただしくその場から走り去る優姫。
周りの呼び止める声も聞こえないくらいに優姫は勢い良く扉を開き夢中で走り出していた。