*一周年記念*

□あいしているから仕方ない
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「愛してるよ」




それは甘い囁き、時に甘い言い訳。

それでも冗談でこんな台詞を言うわけもなく、本心なのだから仕方ないと枢は言う。

言われた張本人である優姫はそんな彼の言葉に対して、そして彼自身に対していつまでも顔を赤らめる。




「どうしたの優姫…黙ってしまって。
嫌なら嫌って言って?」

「……………っ」




絶対わざとだ。
おにいさまは狙ってやっている。


優姫がそう確信するのは、ただソファーに座っていただけなのに枢に何の前触れもなく急に後ろから抱き締められ、甘く響く声をもって「愛してる」なんて耳元で囁かれたから。

それでも枢にそんな悲しそうな声でそう言われては拒絶の言葉など吐けるはずもない。

優姫がそう思うことすら彼の想定の範囲内であり、何も答えられなくなるのは肯定と見なす。

今日も彼女は彼の掌の上だ。




「そんな特別な言葉…
簡単に言っちゃ駄目だと思います!」




ありがたみがなくなっちゃいますよ。

やっとのことで出てきた言葉。
顔を赤くしたまま言う姿に全く説得力はないが優姫は膨れっ面で枢にそう抗議した。

枢は内心微笑ましく思いつつも悲し気な声色のまま優姫の長い髪を手に取りさらさらと弄ぶ。
未だ枢の腕は優姫に絡められたままだ。




「……じゃあ何て言えばいいのかな?
優姫は何て言われたら嬉しい?」

「それは…っ!
そもそもおにいさまが急にこんなことしなければいい話であって…」

「こんなこと…ってどんなことかな?」

「心当たりないんですか!?」

「ごめんね。
心当たりがありすぎるんだ」

「…………っ!」




勝敗なんて初めから決まっている。

優姫は枢に気付かれないよう小さくため息をつき、意を決して振り向いた。




「………ゆう、き…」

「そんな特別な言葉を言うのはこんなときにして下さい」




軽く触れ合うだけのキス。

顔を真っ赤にした優姫にはそれが精一杯。


少しばかり驚いた枢だったがすぐに優しく微笑んでみせ、最愛の人にお返しとばかりに深く甘く溶けるような口づけを贈り、特別な言葉を紡いでみせた。




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