*novel*
□血の味
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「おにいさま、私…聞きたかったことがあります」
「何?」
優姫の声に枢は動きを止める。
枢は優姫の首筋に顔を埋め、今にも牙を突き立てようというところだった。
「動脈血と静脈血…どちらが好きですか?」
「……………」
優姫の突拍子もない質問に枢は血を吸う機を削がれ、思わず顔を上げ優姫を見つめた。
当の本人はいたって真面目な顔で枢を見つめ返している。
「優姫がそんなこと聞くなんて思わなかったよ」
「私、ずっと気になってたんです。
まだ私は味わう余裕がなくて…
おにいさま、どうなんですか?」
意外にも真剣に尋ねる優姫に枢は柔らかく微笑み、優姫の頬を撫でる。
優姫も頬を染めながら、その枢の手に自分の手を重ねた。
「…僕も味わう程余裕がないんだ。
言っただろう?
ヴァンパイアは愛する人の血でしか飢えを満たせないって。
僕は優姫しか愛せないし、その優姫の血を飲んでから日が浅い」
「おにいさま……」
優姫は先程よりも熱くなるほどに頬を染めた。
見つめる瞳もどこか憂いを帯びている。
「だから、動脈静脈っていうよりも…」
枢は再び伏せ目がちにゆっくりと優姫の首筋に顔を埋め、その白い肌に軽く口付けた。
優姫もこれから枢が何をしようとしているのか悟り、枢の首に腕を回す。
「僕は、優姫の血が好きだよ」
そう言って、枢は優姫の首筋に牙を穿たれた。