*novel*


□にらめっこ
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前から思っていたことだった。

この際、変な子だと思われようと思い切るしかないと思った。


それが、貴方の為でも私の為でもあると思うから。




* * *




「枢おにいさま?
いつも何を読んでいるのですか?」


暇さえあればソファーに腰掛け読書に更ける枢。
優姫は本を読んでいる姿さえも絵になるその人に、読書の邪魔になってしまって悪いと思いながらも話し掛けた。


「優姫も読んでみる?」


枢は近付いてきた優姫にちょうど読んでいたページを見せ、微笑みを向ける。
そこにはズラリと活字が並んでいて、それは優姫に目眩を起こさせるのには充分過ぎた。


「え、遠慮します……」


丁寧に断って後退りした優姫は不思議そうな顔をする枢に笑顔を見せ、直ぐに自分の部屋に籠もり作戦を練る。
後先考えずにこれだ、と思ったものを手に取り再び枢のもとに向かった。

幸い枢は本だけを置いて席を外していていた。
これはチャンスとばかりに優姫はその本のカバーを外し、持参した本の方にカバーをかける。


「優姫?何してるの?」

「なっ……何でもないです!!」


背後からいきなり掛けられた声に驚く。
気付けば枢が部屋に戻ってきていて、怪訝な顔で優姫を見つめていた。


「本当に何でもないんです!
じゃあ…失礼します!!」


既に変な子だと思われている気がして目を合わすことも出来ず、優姫は枢に気付かれないように本を隠しながら部屋を出る。
もうバレているかもしれない、と思いつつも扉の隙間からそっと枢の様子を伺った。

枢は気だるそうにソファーに腰を下ろし、再び読みかけの本を手に取る。
そしてその本を、開いた。

どんな反応をするのか?
優姫は息を呑んで枢を見守り、心臓の音はうるさいくらい大きくなる。



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