*souvenir*
□同じ輝きを
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「わぁ…これ、すごく可愛いです!」
「あぁ、優姫にとても似合いそうだね」
「あ、こっちの服も可愛い!」
楽しそうにはしゃぐ優姫を見つめ、枢も自然と顔がほころぶ。
学園を出てからというもの、安全の為とはいえ優姫を屋敷に閉じ込めるようにして彼女の自由を奪ってしまっていた。
それは空を自由に飛び回っていた鳥を狭い籠の中に閉じ込めてしまっていたことに等しい。
それでも「平気です」と言って微笑む優姫が秘めていた気持ちに枢も気付かないはずがなかった。
その償いをするかのように、枢は優姫を外へと連れ出すことにする。
以前のように自由というわけにはいかないが、久し振りにのびのびと外の世界に出る事が出来て、そしてこうして街に二人で出掛ける事が出来て、優姫の表情からも振る舞いからも心から楽しんでいるということがわかる。
そんな優姫の様子を見た枢はほっと安堵の表情を浮かべた。
「お客様、何かお探しですか?」
枢から少し離れて商品を見ていた優姫に店員が声を掛ける。
「あ、いえ…可愛いなぁと思って」
「よろしければご試着も出来ますよ。
いかがですか?」
その店員はただ自分の仕事としてそう言っただけだろうが、相手が悪かった……いや、連れが悪かった。
「あ、今は見てるだけ…」
「優姫、行こう」
「え、ちょっと……おにいさま!?」
店員に対応しかけた優姫の言葉を遮りながら、枢は優姫の手を強引に引く。
優姫は呆気にとられる店員に気まずそうに軽く頭を下げ、引きずられるような体勢から慌てて枢の傍につき、店を出たあたりでやっとまともに歩く事が出来た。
「おにいさま!急にどうしたんですか?
あんな態度は万引きしたって疑われちゃいますよ!」
「だって無理だよ。優姫が見ず知らずのろくでもない男と話しているのを黙って見ているなんて…
しかも試着?下心があるとしか思えないよ」
「そんな…大袈裟です……」
まだ買い物は始まったばかりだというのに出だしから枢がこの調子ではこの先不安でしかない…と優姫は思う。
「あの…やっぱり私一人で…」
「約束を忘れたの?
"何があるかわからないから街に出るのは僕の傍を離れないこと"というのが条件だったろう?」
ニコリと優姫に微笑みかけてそう言った枢。
その上繋いだ手を離してくれる様子もないので、優姫は諦めて枢の隣に並び二人の買い物を楽しむことに決めた。