「ねぇ、慎吾さん」

「?」

ロッカーに向かって、黙々と行きたくないHRにむけ用意をしていた俺に声をかけてきたのは、2個下の天パ(アホ)だった


「あのさ、準さんって眼鏡似合いそうだと思わない?」

「…は?」

「だぁーかぁーらぁー!眼鏡だよ!!」


やっぱりアホな後輩が哀れになり、目から汗を流しそうになっている俺をしりめにアホは続けた


「でね!俺今日伊達眼鏡持ってきたんだ」


そういって、ブレザーのポケットから黒ブチの眼鏡を取り出し、何故か得意気に俺に見せた


「ふー…ん…。じゃ、準太にかけてって言えば?」

「そこで、お願いがあります。島崎先輩」


俺のことを「島崎先輩」と呼ぶということは、結構マジな頼み事だな、なんて考え(こいつはそういう奴だよ)話の続きを待つ


「準さんに眼鏡かけるように言ってくれませんか?」


利央が言って準太が素直にかけてくれないのは、目に見えている
だから、俺に頼んだのだろうということもわかる
しかし


「…俺になんのメリットがある?」

「うわーーん!そんなこと言わないでよー!可愛い後輩の頼みだよ!?」

「お前から可愛さを見い出せない」


部内で関わると面倒な人間2位くらいの準太だ
面倒なので無視を決め込み着々と用意を済ませていた俺に利央は最後の手段だといわんばかりの勢いで言った


「慎吾さんが言ってくれて、準さんがかけてくれたら迅にもかけさせるからー!!」


利央も少しはわかってきたな、と話を受け俺は眼鏡片手に準太の元へ向かった



「よぉ」


用意をしていた準太の隣へいきとりあえず声をかける


「なんですか?またいたらないこと考えてんじゃないでしょうね?」


あー、こいつも利央も全く可愛くないよな
先輩をなんだと思ってんだ
本当お似合いだぜ
と、言いたいことは沢山あるが下手なことを言って頼み事しても100%してくれないとわかっているので下手に回るに徹底することにする


「なに言ってるんだ、俺がそんのことするようにみえるか?」

「えぇ、そんな風にしか見えません」

「あ、そう…」


なんとなく悲しい気分に陥ったが、ここは迅の眼鏡がかかってる


「なぁ、準太、実は頼みがあるんだが」

「……なんですか?」

「んな警戒しなくてもよー」


いつになく笑顔で言ったというのに


「慎吾さんは、部内で関わると面倒な人間2位くらいの人物ですからね」


なんだと
お前に言われたくねー
お前だって2位…いやもう1位だ!!


「俺のどこが面倒なんだよ。…まぁ、いい。それより頼みなんだがな、コレだ」


言いたいことだらけだが、早いこと本題に移そうと利央から預かった眼鏡をポケットから出した


「…は?」

「……眼鏡だよ」


そりゃ、は?ってなるよな


「で?」

「これを今日一日かけてほしいんだ」

「なんのためっすか?」


利央という名も迅の名も出さずに説明は難しい
正直俺は準太の眼鏡にみじんの魅力も感じない
だが、乗り切るにはいつもの勢いだと思い発した言葉が間違っていたようだった
「あー……、フェチ的な?」そう言うとわかりやすく後退りをして、そのまま急いで迅の元に走り去った準太は迅の肩を握り気迫に満ちた様子で叫んだ


「気を付けろ!!あの変態今度は眼鏡らしいからな!!」


全く意味がわからない迅は顔に「?」を浮かべとりあえず頷いている
てか、待って
変態?
つか、気を付けろだと!?


「おい、準太!今のは聞き捨てならねーな!!」

「だって、必ず迅にもとばっちりはいくでしょ?」


さっきの勢いはどこへやら
いつものシラっとしたテンションでそう言いチラリと利央へ視線を移した

バレてる!?
流石に察した利央も知りませんオーラを出しつつ、準太と目が合わないようにしている


「おい、利央。お前だろ」


だんまりの利央(顔には「はい」と書いてあるからもう言い訳はきかないだろうが)


「本当のこと言えば、眼鏡かけてやってもいいぜ?」


準太がそう言った途端というか語尾に被せる勢いで利央は言った


「俺です!!」

「やっぱり。で、慎吾さんは迅の眼鏡見たさでしょ。」


どうやら、全てお見通しだったらしい


「じゃ、準さん!めが「かけるわけないだろ」


利央が言い終わる前に放たれた惨い一言
それに、ガクつき始める利央
やっぱりあいつはアホだよな、準太がかけてくれるわけねーよ
それに比べて迅はきっとかけてくれる!
と迅に近付いていくと近付いた分だけ遠ざかった
あれ?
俺が一歩行くと迅も一歩

…?
俺があまりに「?」な顔をしていたのだろう
迅は少し申し訳なさそうに言った


「準さんが気を付けろと言っていたんで…」


……!!
なんだとーー!!
俺よりあの和己馬鹿を信用するのか…!?

絶望が俺の中をかけずり回っている最中面倒なやつ1位の男山ノ井は何事もなかったかのような顔で「もう行かないとHR遅れちゃうね」と言い荷物を持ち、部室を後にした
その言葉にそうだなとみな続く


皆が出て行った後、静かになった部室に取り残された利央と俺に追い討ちをかけようと戻ってきたのはやはり山ノ井だった


「二人って似てるよね。アホなとこが」


満面の笑みでそれだけ言うとバタンと扉を閉め去って行った


なんだ、俺もアホなのか…
意味もわからないがぽっかりと心に穴があき、深い傷をおった俺がHRに出なかったのは言うまでもない





ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!

ヒットありがとう文で敢えて本命カプを書いてないのは何故か。
自分にもわかりませんww
二人のアホ話が書きたかったw

結局準太も迅も放課後かけてくれたと思うよ!(?)



二千ヒットありがとうございました!!



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