BC
□ここから見える残像と
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いつかは来なくちゃいけないと思ってた。
でも、なかなか来れなかった。
それはきっと
あなたはもういないんだって、認めるのが恐かったから─…
「デートなんて言うから何かと思えば」
風に乗せて不満をこぼした。
「いけない?」
少し先に立つ相棒は、振り向きもせず声だけ返した。
表情が見えない分、面白がっているのではと疑いたくなる。
彼はいつもの笑みを含んだ口調で返事をしたから。
「いけなくはないけど、趣味が悪いわ」
ため息混じりに抗議を続ける。
彼と組んで随分経つのに、何を考えているのかは今でもよくわからない。
「いいじゃない、風も気持ち良いし空も綺麗だし」
穏やかに返す口調は、この風のようで。
たしかに、良いところではあった。
程よい風に、目も眩むほどに晴れた空
その青が、一面に広がる岩肌の景色によく映えていて。
緑がないので寂しくも見えるけれど、荒々しい岩盤は自然の力強さをそのまま閉じ込めたようだった。
どこまでも続きそうだった岩々は少し先のところで途切れ、小高い丘になっている。
彼はその丘に立っていた。
今、私が立つ場所からは見えないけれど、
私はその丘から、
もうすぐそこにミッドガルが見えると知っていた─…
「…やっぱり、趣味が悪いわ」
彼の立つ位置から目をそらした。
今はまだ、そこに見える風景を直視することはできなかった。
だって、どんな顔でそこに立てばいい─…?
心の準備はできているつもりだった
前を向こうと決めていたから。
いつかは来ようと思っていた、
それが少し早くなっただけだと。
けど、そう思っていたのは頭ばかりで
心はまだ、目を背けたままだった
『行きたい場所があるんだよね』
ここに来たいと言い出したのは彼の方で
『君しか知らない場所なんだ』
意味がわからず顔をしかめた。
どこに、と聞いた私に向かって
彼はいつもの調子で返事を返した。
彼が何のためにここに来たいと言ったのか
何を思ってそう言ったのか
理解できないままただ頷いた。
だって、他にどうすることもできなかった
彼はあの時、笑っていたから
「どうして、来たいなんて思ったの…?」
あの時聞けなかった問いをようやく口にした
笑って誘うにはあまりに酷な
どうしてここに─…
ザックスの最期の場所に
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