Lycoris

□01:その貴婦人、邂逅
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“あの人”に出会ったのは十五の時だった。




「君は何故そんなに前髪を長く伸ばしているの?」

「私は姉さんと違って美人じゃないし…」




身体が弱かった姉さん。
優しくて美人で、だけど気取ってなくて大好きだった。
母親似の優しい亜麻色の髪が大好きで羨ましかった。




「髪だってこんな赤毛で…」




父親似の赤毛が大嫌いだった。

赤色が大嫌いだった。




「人と違うのは“恥”じゃない。個性だよ」

「!」

「アンの赤毛はとても綺麗だ。地に燃えるリコリスの色




君には赤がよく似合う」




父親似の赤毛が好きになった。

赤色が大好きになった。




「もっと自信をもっておいで」




そして私は、前髪を切った。




「(褒めてくれるかな…)」




“あの人”が大好きになった。
“あの人”が来る日は似合うと言ってくれた赤を着た。




「ああ、やっと来た。アン、いい知らせがあるの」




大好きな“あの人”は大好きな姉さんと結婚することになった。

大好きな二人の結婚式には大好きな赤いドレスを着て行った。

大好きな二人が幸せなら、私も幸せだった。




はずだった――――…。




「アン、抱っこしてあげて。貴方の甥っ子よ」




大好きな姉さんと、大好きな“あの人”の…。




「鼻の形があの人にそっくり」

「ッ…」

「大きくなったらたくさん遊んであげてね」

「…、うん」




赤色が、また嫌いになった。






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