リアルおままごと

□Conte【9】−団欒−
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カーテンの隙間から差し込む朝日を目覚まし代わりに鈴屋家、母親役のユキジの朝は始まる。
朝日に目を細めて起き上がりユキジは小さな欠伸をもらすと隣で静かに寝息をたてる姉弟に視線を落とす。
顔を隠してしまっている前髪を払うとトーカの愛らしい寝顔が見えた。反対側では無意識にユキジの服を握り締めるアヤトの可愛らしい仕草。
その手をそっと解けばアヤトは身動ぎ身体を丸くさせて再び寝息をたてる。
朝から2人の愛らしさにノックアウト寸前のユキジは『ごちそうさまです』と心内で手を合わせるのだった。

2人を起こさない様に細心の注意を払いながらベッドから起き上がったユキジは大きく背伸びをする。
その際に、改めて自分の部屋を見回すと思わず苦笑いを浮かべてしまった。




「ボロボロだなぁ…」




壁は所々抉れてしまいカーテンは破れ、クローゼットにはいくつもの穴、鏡が割れたままの化粧台。
初めて姉弟と出逢ったあの日トーカの羽赫によってユキジの部屋は半壊し、未だそのままの状態で残されていた。
いつまでもこのままにしておくのもいかない…何より部屋の傷を見る度にトーカが悲しそうな顔をすることが全く持って頂けない。

末っ子の笑顔を守る為にも早くこの部屋を直さなければならない。
寝入っている2人を一瞥したユキジはとある決意を胸に固めたのだった。










「「「模様替え?」」」

「うん!そろそろみんな今の壁紙やカーテンに飽きたんじゃないかなーって」




リビングに集まった起き抜けの彼らは瞼を擦りながら湯気立つコーヒーを乗せたお盆を持ったユキジを見上げた。
お盆をテーブルに置いて1人ずつにマグカップを手渡し、その際に未だ瞼を擦るイトリの手を持ち『掻いちゃダメ』とカップを握らせる。




「随分と急な話ね。いきなりどうしたの」

「実はね近くにある家具屋さんで期間限定ファミリーセールやってて今日が最終日なのよ!」

「ユキジさん、わざわざ店舗に頼らずとも僕を頼ってくれれば月山家の力を以って全て揃えられるのに」

「出たよ金持ち宣言」

「「(変態がお金持ち……)」」




前髪を梳いて得意げに笑う月山にイトリが舌打ちを飛ばし、末っ子組は月山が金持ちであることに驚きを隠せないでいた。
そして彼の発言にユキジはむっと顔を顰めて首を左右に振る。




「ダメダメ、それじゃあ意味がないわ!こういう事は家族みんなでお店に行ってみんなで相談して選ぶことに意味があるんだから」

「そうなのかい?」

「そうなのです!一流なモノを揃えるのは悪くないけど庶民的なものも悪くないわよ?」

「ふーん…ユキジさんがそこまで言うなら見てみようかな」

「ふふっ決まりね!あ、それとベッドも一つ追加しようと思います!」

「壊したの?」

「違うわよイトリじゃあるまいし。失礼ね」

「あんたはあたしに失礼だっつーの」




ウタがソファーで寛ぐリゼを見上げると彼女が心外だと言わんばかりに顔を顰めれば、聞き捨てならない台詞にイトリはガッとリゼの頬を挟んだ。




「そうじゃなくてね、トーカちゃんとアヤトくんの2人部屋を作ろうかなって思って」

「私たちの部屋?」

「うん。私の部屋は元々1人部屋だから窮屈でしょ?また部屋はいくつか空いてるから2人には伸び伸びと過ごして欲しいし」

「!好きなものとか置いていいの?」

「勿論!予算の都合で限りはあるけど欲しいモノがあれば買ってあげるよ!」

「僕は嫌だ!!!」




自分の部屋を持てることが特別な事のように感じたトーカは瞳を輝かせ、どんな部屋にしようか想像を膨らませる。
しかしアヤトは口をへの字に曲げるとユキジの腕に抱き着き『イヤイヤ!』と首を横に何度も振るった。
珍しく駄々を捏ねる彼にウタが『どうして?』と問うと。




「だってっだって!自分の部屋があったらユキジと一緒に寝れないっ」

「っ、わ…私もそれやだ…!」

「ふ…2人とも…そんなに私のことをッ…!」

「ユキジ、顔」




いつも通りにリゼの冷たい視線が突き刺さるが感涙を交じりに浮かばせ、ユキジの顔はだらしなく綻び始める。
その様子にユキジ大好き月山が不貞腐れ、腕を組み彼女に抱き着く末っ子組を見下ろした。




「それは甘えというものだよlittle boy。駄々を捏ねるのは止めたまえ」

「煩い!ユキジと一緒に寝たことないクセに!」

「ッ…Be cool月山習…高が子供の言うこと…flatに行こうじゃないかッ…!」

「全然フラットじゃないけど」




ウタが肩を弾ませる月山をまるで馬のように宥める隣で女子組は『グッジョブ!』とアヤトに親指を立てた。




「ふふっじゃあアヤトくんとトーカちゃんが気に入るようなベッドが無かったらお部屋の事はまだ今度にしよっか」

「うん。そうするね」

「僕は絶対にいらない」

「見るだけ、見るだけね?じゃあ急いで準備しなきゃ!みんな着替えて玄関前に集合ねー!」

「「「はーい」」」




ハンカチ、ポケットティッシュ、お財布に小腹が空いた時の指スナック。
全員が揃いそれぞれの持ち物を確認したユキジは彼らの先頭に立ち、高らかに手を上げた。




「ではいざ行かん!大型家具センター“ニ○リ”へ!」

「イトリ?イトリさん?」

「お約束のギャグを持ち出すのはこの口かなトーカちゃぁああん?」






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