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□FRIEND〜委員会決定!の段〜
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本日は休日であり、忍術学園をお休みだ。
生徒が家に帰宅するなり、城下町へ下りるなりとそれぞれの時間を自由に過ごす事が出来る日である。
下級生の場合、帰宅する者がほとんどで上級生は滅多なことが無い限り忍術学園に残り、自主訓練、予習復習、もしくは委員会に励む。
そして教員の場合は溜まっていた仕事を片付け、生徒の成績を付けるのに休日を使ってしまうことが日常茶飯事であり家に帰れる人数は限られている。

しかし、その中でも下級生並に休みを満喫している者が一人…。




学園長「出来たぞヘムヘム!!!」

ヘムヘム「ヘム!」




そう、忍術学園学園長大川平次渦正であった。
学園長は持っていた太筆を硯に置くと文鎮を外し、手漉きの和紙を目の前に掲げると満足げに頷く。
傍らでお茶を飲みながら見守っていたヘムヘムは湯呑を置き、学園長に拍手を送る。

和紙には【忍者はガッツじゃ!】と力強く記されていた。




学園長「ほっほっほ!流石ワシ、かなりの出来栄えじゃのうヘムヘム!」

ヘムヘム「…へむぅ」




自画自賛する彼の傍にはクシャクシャに丸められた和紙の山、しかし賢い忍犬は敢えてツッコムことはしなかった。
学園長はそれを掛け軸にして飾るとあまりの出来栄えに学園長は再び大きく頷き、ヘムヘムが淹れてくれた緑茶で喉を潤す。
静かな時が流れ、数日前に荒れていた忍術学園の面影は跡形も無く、穏やかな日常が続いてる。

しかしカコン、と鹿威しが鳴ると学園長は高い蒼穹を見上げて深い溜息を吐いた。
それをヘムヘムが『どうしたの?』というふうに覗き込む。




ヘムヘム「ヘム?」

学園長「いや、平和なのは良い事なのじゃが…芙蓉がまだのぅ…」




挙がった名は近頃漸く忍術学園に慣れた編入生だった。
決して頑なに心を開かなかったあの子は今や学園に身を委ね、ここと本気で向き合おうとしている…風に見えたのだが。
学園長の様子にヘムヘムはそれは自分の思い過ごしだったのでは、と眉を下げて俯いた。




学園長「芙蓉がまだ…………委員会を決めてないのじゃ」

ヘムヘム「へむ゙ッ――!!?」




紛らわしい学園長のリアクションに思わずヘムヘムは俯いた顔をそのまま畳に叩き付けてしまった。
鼻を押さえて顔を上げれば『はあ〜!』と大きく溜息を吐く学園長、『紛らわしいわ!』と勿論ヘムヘムは吠えた。




学園長「昨日話せば芙蓉は…」




学園長「芙蓉、委員会の見学も終えたじゃろ?事も落ち着いた処でどれか入りたい委員会はあったかの?」

「あの…それは強制なのでしょうか?」

学園長「そういうワケではないが信玄公からはお主に色々経験させてほしいと言付けがあるのでな、ほぼ強制じゃ」

「ならば仕方ないですね…んー…それでは、」

仙蔵「勿論、作法委員だ」

「おまっ!!?どっから出てきた!!?」

文次郎「聞き捨てならねェな!それこそ強制じゃねェか!」

伊作「芙蓉!保健委員に入って!君が入れば不運が緩和されるかもしれない!」

長次「…図書委員」

小平太「体育委員のが楽しいぞー!」

留三郎「アホか!!テメーらが組んだら学園が今以上に破壊されるだろうが!ってなワケで用具委員だ!」

八左ヱ門「あ、あの!生物委員には委員長がいなくて…!」

兵助「火薬委員もです!出来れば俺たちを優先してもらえ、」

「「「竹谷/久々知〜〜〜!!!!」」」

「「ひぃいい!!!」」

「後輩を怯えさせるなァァアアア!!!!」




学園長「結局その日から先延ばしになってしまってのぉ、そろそろ信玄公への返事も書かねばならぬのに」

ヘムヘム「へむぅ」




『ご苦労様です』と学園長の労わるように鳴くが内心そこに自分がいなくて心底安堵していたりする。
再び鹿威しがカコン、となったその時、学園長は目を見開き空高く指を突き上げた。




学園長「思い付いた!!!」

ヘムヘム「ヘム?」

学園長「今から芙蓉を捜しに行き、芙蓉の傍にいる最も近くにいた生徒が所属している委員会に彼女を入れよう!!!」




学園長の言うことはつまり、芙蓉とその場で偶然居合わせた者が所属する委員会に彼女を入れるということである。
これならば誰も文句は言えない!と意気込む学園長だが所謂これが一種の【責任放棄】であることに変わりはない。





ヘムヘム「ヘム!?」

学園長「そうと決まれば早速芙蓉を捜しに行くぞ――!」

ヘムヘム「…ヘムヘム…」




ご老体とは思えない走りをみせる学園長の後ろ姿にヘムヘムは何処かで休日を満喫する芙蓉に合掌するのだった。




一方、話の渦中である芙蓉は




「ない…!ないないないッ!なッ…ないィィィイイイイ!!!!!」




裏裏山の中心で、頭を抱えて絶叫していた。





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