【2009】

□出会い
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始まりはしとしとと降る雨の中だった




こんな雨の中、しかも夜ともなれば余程の物好きでもなけりゃ出歩かねぇだろう、と、高杉晋助はその物好きで外をぶらぶらと当てもなく歩いていた

「―――?」

ふと足を止め、周りの気配を窺う

「気のせいか」

独り言にしてはヤケに大きなつぶやき
そしてそのまま、歩きだした






どれくらい歩いただろう?

「―――いい加減、出てきたらどうだ?」

不意にピタリと足を止め、誰も居ないのにそんなセリフ

「俺の首が狙いって訳じゃねェんだろ?」

ククク…と笑い、隻眼で闇を見据える
ザ…とその闇の中から一人の男が歩み出て来た

「鬼兵隊総督、高杉晋助殿とお見受けする」
「…ああ」

雨が、小降りになってきた

「お相手願いたい」

キチ…と刃が鳴った
高杉は刀に手を伸ばさない

「理由がねぇな」

興味無さげに高杉が笑う

「…ならば、理由を作るまでっ!!」

その瞬間、ブワッと男から殺気が溢れ出た


◆◇◆◇◆


「もう、しめぇか?」
「…っく」

高杉に斬り掛った男が悔しげに歯ぎしりをする
それに対して高杉は雨が上がったのを幸いに、先ほどまで使っていた煙菅に火を入れて、ゆるりと紫煙をくゆらせる余裕まである

「何があったか知りたくもねぇが、そんな乱れた刀じゃ何も斬れやしねぇ。テメェの刀は何も求めちゃいねぇ」

くるりと背を向けて、道を先へと歩き出す
いつの間にか出ていた月がその後ろ姿を浮かび上がらせた

「…っま、待ってくれ!!」
「ああ?俺ァ負け犬に用はねぇよ」
「拙者、河上万斉と申す」
「……」

ピタリと高杉の歩みが止まった

「頼む、拙者を鬼兵隊に入れて欲しい」
「弱いヤツは足手まといだ」
「強くなる。主の為に」

その言葉に振り返った
月明かりに照らし出されていたのは、黒コートにサングラス、ヘッドホンの長身の男…いや、河上万斉

「……一年だ」
「え?」
「一年で名を挙げろ。そしたら考えてやる」

それだけを告げて高杉は今度こそ立ち去った






それから一年



「本当にやるとはな」
「高杉殿の為でござる」


ヒュッ、キィィン…


「いいぜぇ、相手になってやる」

今度こそ高杉は刀を抜いて、万斉の刀を受け止めた

「否、もう良い。今宵からこの刀は高杉殿の為だけに振ろう」


万斉は刀を鞘に収め高杉の足元に跪き、頭を垂れた


その夜は、一年前のように綺麗な月が出ていた






おまけ

高杉・昔は可愛かったのによぉ
万斉・え、なんでござるか?
高杉・うっせぇ、黙れ

変な拾い物をしてしまった。と、高杉は最近よく思っていた

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