【2009】

□同棲記念日そして・・・
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あんまり意味ないですがパラレルです


河上万斉―昼と夜の二つの顔をもつ男

「晋助ぇ〜今帰ったでござるよ〜」

まあ、その実態はかなりのアホゥでしかないのだけれど…





その日は昼の顔、音楽プロデューサーの仕事が長引いてしまい、いつもと比べるとだいぶ遅い帰宅となってしまった

………………
シーン…

「晋助?」

遅くなったとはいえ、時刻はまだ夜の九時
夜行性とも言える同居人の高杉晋助が寝てしまった筈はない

「晋助?」

それならばどうして返事が無いのだろう、と、ブーツを脱いでリビングを覗く
…誰も居ない
テーブルの上にも何もない

「…出かけたか?」

ならばテーブルの上にメモのひとつも有る筈だ
首を傾げて考えても何も分からない
それから、風呂トイレ、寝室も捜してみたけれど、高杉の姿はみつからない
いよいよ万斉は不安になったが、さっぱり頭が働かない

「―――っ!」

ぐしゃぐしゃと髪をかき回してソファに乱暴に座り、特大のため息を吐く
次に何処を捜せばいいのか分からない
サングラスとヘッドホンをソファに投げ捨て

フ…

と、部屋の灯りが消えた

「――?!!」

慌てて立ち上がろうとしたが

「っつ??!」

ドカッと何かにのしかかられた

「何奴っ?!」
「…ぷ、あっはははは!!わりぃわりぃ」
「し、晋助?!」

のしかかってきていたのは先ほどまで捜していた最愛の人物

「悪い。でも、お前も悪ぃんだぜ?」

こんな日に帰りが遅くなるなんて。と言う高杉。何か約束でもしていたのだろうか?

「へ?」

心当たりを探ってみたが、何も思い当たる事は無い
電気を消していても万斉の困惑を感じ取ったらしい高杉は

「…忘れちまったのか?」

どこか寂しげな声を出す

「晋助?!」

高杉がこんな声を出す程の事。万斉は必死で思いだそうとするが

「……もう、いい」

高杉は万斉から離れ、寝室へと行ってしまった
パタンと音を立てて閉じられたドアが大きな壁に感じられる


◆◇◆◇◆


ただ謝るだけでは駄目だ
万斉は今までに無いほど頭をめぐるましく働かせ、考えた

「…何故、今日なのだ?」

そう。何故、今日なのだろう……?
己の誕生日は五月。高杉の誕生日は八月…

「…誕生日?」

ふとカレンダーを見て

「………あ、」

万斉は顔を引き締めて、高杉が籠ってしまった寝室へ向かった


◆◇◆◇◆


寝室にデンッと置かれているのはキングサイズのダブルベッド
本当は天蓋付きを買いたかったのだが、高杉の猛反対にあって万斉は泣く泣く天蓋を諦めたのだ
そんな曰く付きのベッドの端っこがこんもりと盛り上がっている
万斉は声をかけず、その盛り上がりのそばにゆっくりと座り、黙っている

「………」
「………」

高杉が寝ていないと知っているからこその沈黙

……………

「………んーだよ」

先に音を上げたのは矢張高杉

「すまぬ、晋助…」
「なんの事だよ」

モゾ…、と塊は動いたけれど、高杉が顔を出す気配は無い

「すまぬ」
「………」
「忘れていた」
「…だから?」

高杉の返事はそっけないモノばかり

「顔を、見せてはくれぬか?」
「俺は見たかねぇよ」

モゾリと塊が動く

「ならば晋助が顔を見せてくれるまでずっと此処に居よう」
「明日、仕事じゃねぇか」
「休むでこざる」
「コンサート、近いから忙しいって言ってたじゃねぇか」
「晋助の方が大切でござる」
「………バカ万斉」
「そうでござるな。晋助を悲しませるなど、拙者はバカ以外の何者でもござらん」
「……思い出したのか?」
「ああ」

その返事にむくりと起き上がった高杉
まだ、大部分は隠れているけれど

「一年前の今日でござったな」
「………」

ゆっくりと高杉へと手を伸ばす

「こんな大切な日を忘れていたなど…」
「本当だぜ」

抱きしめる

「すまぬ、晋助」
「聞き飽きた」

ギュゥとシャツが握られる

「言わせてくれぬか」
「…何を?」

高杉は顔も上げない

「これからを共に生きてくれぬか? もう二度と、同じ過ちは犯さぬ」
「……仕事の方が俺より大事なんじゃねぇのか?」
「そんなわけがある筈無かろうっ!!」

突然強い調子で言われ、高杉はビクリと体を揺らす
意地の悪い問いだと分かっているのだ

「……だって…よぉ…」

それでも、小さな子供のわがままと同じだと分かっていでも、ぐずぐずとダダをこねてしまう

「信用、ならぬか?」
「………」

違うと言いたいけれど

「暫し、待たれよ」

万斉は軽くため息を吐いて立ち上がり、高杉を残して寝室を出た
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