【2009】

□結婚記念日(R18
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寝室に入り万斉は改めて高杉の手を取る
その,男にしては細い指先にそっと口付けをして

「幸せにするでござるよ」

在り来たりな言葉だけど,やはり一度は言われたい言葉
それに対して高杉は

「俺が幸せにしてやるんだ」

精一杯の言葉。二人で幸せになるんだ,と

「当然でござるよ。拙者の幸せは全部晋助に繋がっているでござる」
「………」

平然とそんな風に返されてしまっては高杉に更に返す言葉なんて見つけられるはずもない

「ああ,くそ」
「晋助?」

黙ったかと思えば急に悪態を吐いた高杉を万斉は不思議そうに見て,そして笑った

「んーだよ」

ふて腐れたように唇を尖らせて高杉は万斉をちらりと見る
それに万斉は答えもせず,ズイと体を進め

「………っ!!」

ちょんと触れるだけの口づけを一つ
それから高杉の体に己の腕をゆるりと回し

「……幸せでござる」

ほう,と満足気なため息と一緒に

「そうかよ」

言う高杉も満更ではないようで,力を抜いて万斉の広い胸にもたれ掛かるように体を預けた

「晋助」
「……」

名を呼ぶたびに触れるだけの口付けを一つひとつ
ゆっくりと体を溶かされる
きつく巻かれた帯が緩くなり,取り去られ,厚く重ねた着物が一枚ずつはがされてゆく
じれったくて高杉は少し落ち着かないけれど,万斉はそれを楽しんでいるように窺える
やがて広がった着物の上に高杉の裸体が浮かび上がる

「……晋助」

掠れた声で呼ばれて不覚にも心臓が跳ね上がる
けれど

「……クス」
「晋助?」

触れる手が,唇が微かに震えているのを見て取って思わず笑みが零れた

「らしくねェじゃねえか。ん?」

不敵にニヤリと笑って見せれば

「最初の時よりも緊張しているでござる…」

なんとも情けない顔でそう正直に万斉が零してくる
いつもとなんら変わりはないだろう,と言いかけた高杉だが,なるほど花婿としては結婚初夜に,失敗はしたくないだろう
後々までからかわれ続けるだろうし,自分なら間違いなくそうするだろうから

「じゃあ,止めっか?」

意地悪く聞いてみる

「まさか」

首を振った万斉が,こちらも漸くニヤリと笑った




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