GAME
□暴食アリス
―――…―………。
おなかすいた。
**
気付けば広い草原にアリスは立っていた。
春の香りを思わせる、爽やかな風がアリスの銀髪を揺らす。
と、
ぐぅ。とアリスの腹が鳴る。
そうだ。
アリスはお腹が空いていたのだった。
ガサリ、
と、草むらで何かが動いた。
アリスの視線もそちらに動く。
アリスの目が映したのは、真っ白な、それは白すぎる程白い、そんな毛並みのウサギの耳だった。
耳の内側はふわふわなピンク色で、ぴん!と立った耳の先は細い血管が通っているのが見え、何だか美味しそうに見えた。
コリコリしてそうだ。噛みたい。
毛は邪魔だからむしらなければならないなぁ、とアリスはボンヤリと思った。
やがて耳だけだったウサギが草むらから顔を出し、此方を向いた。
その紅い瞳とアリスの目がばっちり合う。ウサギの鼻は可愛らしくピクピクしていた。
じーっと目を合わせていたが、やがてアリスは狩りの体勢に入る。
何処から出したのか、元々持っていたのか、それとも体の一部なのか、異次元空間から出したのか、それはわからないが、アリスは身の丈程ある大鎌をその華奢な両手で抱えていた。
この大鎌、気付けば出てたり、消えてたりする。アリスが必要だと思った時に、出てくるらしい。
「うさぎ、うさぎ、たべる。」
アリスはそう口にした。まるで言葉を覚えたばかりの、幼子のような拙い口調だった。
しかし彼女が構えているのは鋭い刃の大鎌である。
とんだ幼子だ。
彼女の殺気に気付いたウサギは、全力で駆け出した。獣らしい俊敏な動きである。
しかしアリスも負けずに全力で走った。爽やかな草原を。
「まてまてまてまてー」
ザザザザザ。
草むらを掻き分け、声色を変えず「待て」を繰り返すアリス。命を狙われているのに待つ馬鹿などいない。ウサギも必死だ。
しかし、このアリス。
獣よりも素早かった。
オリンピックに出ろ。
(ウサギの心の声)
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